創作物語の館・総目次のページ(最新状況はこちら)

手のひら端末でも読めそうな「夢見るようなファンタジーで、命を守る」お話を、ぼちぼちリストして行きます。

new最近の更新

・【理絵子の夜話シリーズ】「差出人不明」
(8/16・毎週水曜更新)
最新→ -3-
第1話

・【魔法少女レムリアシリーズ】「アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~」
(8/19・毎週火曜・土曜更新)
最新→ -125-
趣旨と前書き・目次

bookお話カタログ

●連載タイプ(掟破りの携帯で長編)
drama魔法少女レムリアのお話(現在15編)
night超感覚学級委員理絵子の夜話(現在7編)

●長編
yen「天使のアルバイト」
天使が、人に近い属性を備える理由、そして、だからこその過ち。その結果。
(目次

●短編集
cafe大人向けの童話(現在10編)
heart01恋の小話(現在13編)
virgo妖精エウリーの小さなお話(現在22編)
ng(分類不能)「蟷螂の斧」

penリンクのページ

色んな切り口色んな長さ。他の「ココログ小説」の方々の物語。「へぇ、こういうのもアリだな」そんな発見をどうぞ!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-125-

←前へ・次へ→

 
 バウンドし、再度飛び上がる……瞬間に強い腕が伸びて来、彼女の身体は動きを止めた。
 細身に巻き付く筋肉質の腕はラングレヌス。
「良くやった」
 彼はそれだけ言うと、彼女を“お姫様抱っこ”で引き上げ、甲板に下ろし、立たせた。
「レムリアは確保。マスト復位許可」
 了解の旨ピンが来る。程なくマストが動き出し、帆膜を縮めながら元のように立ち位置。
 何事かと見ていた街の人たちから拍手が沸く。そしてめいめい、そもそもの目的地へ向かって歩き出す。
 相原が言う。
『準天頂の画像を見る限り黒ずくめは拘束された。島の皆さんは、黒ずくめが乗って来た船に乗った。すぐ操作できるらしい。あ、モールス入電。“あさひ丸”号より謝礼。お嬢さんありがとう。合流し救助活動参画を許可願う……船長どうしましょう』
『許可する。状況に基づき本船と役割分担して救助継続せよ』
『承知しました。アルゴトランスレーショントゥモールス。あさひ丸……こちら先ほどのメガネ男。救助参画歓迎なるも、現状、要救護者は海上漂流、陸上倒壊建造物内、ガレキに巻き込まれた、等が対象と考えられる。我らは共に船舶であるから、海上漂流者を共同で捜索いただければ妥当と考えるがいかがか』
 相原の声を聞きながら操舵室に戻る。そこでレムリアには一つの迷いがあった。
 この船は救命装置を持っている。このままこの地で臨時の病院にも出来る。
 否。
 動けるなら、動く病院。そしてこの災害の主体は津波、すなわち水。
 レムリアはピンを打って割り込む。
「私も学の提案に賛成です。地の利ある方と共に捜索し、必要に応じ我々の救助救命リソースを投入できれば良いかと」
『共同で海上・海中の捜索に当たれ』
「了解」
 レムリアの言葉はアルゴ号の総意となった。ただちに川を下り、気仙沼湾に戻る。一方島の方からは漂い燃えるガレキを右に左に躱しながら、こちらへ向かってくる漁船。
 
(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【理絵子の夜話】差出人不明-3-

←前へ・次へ→

 
「ババア何か言ってた?」
「出席が、って。他のクラスの個人情報をよくご存じのようで」
「足りないか。しょーがねーな」
 二人は下駄箱へ歩く。
 部活上がりの同級生たちから奇異の目。
 理絵子はそうした視線を受けるたびに、この少女が外見からは判らぬ傷を心にひとつずつ増やして行くのを良く知っている。
 同学年だが1つ年上。外見はいわゆる不良。でも少女は少女であり、薄いクリスタルガラスのような心の持ち主であることに何ら変わりはない。
「面倒ばっかり悪いな。ったく、ババアもこっちに直接言えばいいのによ。口ではえらそうなこと言って。オレってそんなに怖いか?」
「大人が気にするのはまず外見と世間体。自分なんかその典型的被害者」
 理絵子は言うと、スタンダードなままのセーラー服を広げて見せた。
 もちろん、化粧はおろか装飾品の類は一切身につけていない。かばんも学生用の黒い革かばんそのままである。
「あたくしもミニにした方がカワイイかしら、とか思うんだけど、親の仕事があれだから、『示しが付かないことしてくれるな』ってね。しょうがいなから髪の毛だけ違反ギリギリにしてる」
 それは伸ばしてりぼん、の部分。校則では髪を肩より伸ばす場合は“三つ編み”である。聞けば昭和40年代からだとかで、当然、ブーイングの嵐。
 桜井優子はフッと笑って、
「お前ってホント面白いな。しかし警官の娘が不良のお守ってのもなんだかな」
「自分が名前で呼ぶのは優子だけだよ」
 理絵子は笑って応じた。
 楽しい。この少女とお喋りするのが本当に楽しいと思う。そして、恐らくはここまで通じ合えるのは、クラスの中で二人の立場が似たようなものだからだという気がする。
 この少女はその外見と“同学年だけど年上”であるが故にみんなから距離を置かれている。
 
(つづく)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-124-

←前へ次へ→

 
 体が軽くなる。上へ向かう速度が落ちて来、“てっぺん”に達しようとしている。
 彼女は超絶の銃に力を込める。20キロを持ち上げるのではなく、向きを変えるだけ。
 更に言うと、この銃は人工衛星と同じ姿勢把握制御システムを内在しており、“だいたい”の方向に向けさえすれば、自分で適当に首を振り、向きを保ち、照準に任意波長のレーザを撃ち込む。
 12キロ彼方の標的に選んだのはX線レーザ。レントゲン撮影に用いる放射線のレーザである。
 銃を構える。銃自身が、上昇から静止し、落下に転ずる動きに合わせて、銃口を引き上げる。
 銃身と、銃自体のスコープと、自分のゴーグルとが一直線を成す。
 ロックオン。
 引き金を引く。銃が自ら左から右へ銃口を振り動かす。自分は手首に加わるその反力を、モーメントを相殺する。
 6名14の照準ポイントへ向かい、ほぼ一瞬で不可視のエネルギが投じられる。
 14の照準ポイントで次々火の玉が生じたり発煙したり。
 黒ずくめの者どもが、各々の得物の異変に気付く。
 しかし、彼女は者どもに続くアクションを許さない。
 ビームモード、メーザ。すなわちレーザと同じ性質を備えた電波。
 それを用い、今度は右から左へ銃を動かす。
 黒ずくめそれぞれ所有の携帯電話、クルマの電波鍵等の電子機器が煙を噴いてポンコツになる。警棒もアルミ合金製ゆえにメーザを受ければ灼熱化。
 島のおじさん達が者どもを襲った変化に気付き、逆襲に転じる。及び、自分の役目は終わった。
 落下に遷移する身体を、そのまま万有引力に任せる、大の字に手足を広げ、超銃を手から放す。
 轟と音を立てて我が身は落下し、柔軟でしなやかな膜に受け止められた。
 一旦沈み込み、膜が反発して跳ね返り、再度飛び上がる。風が吹き、風が止まり、逆方向の風になって再度膜に落下する。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-123-

←前へ次へ→

 
 レムリアは言い、ゴーグルを目の位置にセットした。銃把のスイッチをスライドし、ゴーグルの裏に文字列が走って協調完了。相原が舷側に退き、自身の活動服の腰ベルトをワイヤーフックで柵に接続。
 相原は頷いた。
「行くぞ」
「はい」
「操舵室。甲板準備良し。第1マストを船首外へ伸展と共に船体アップトリム90度。マスト先端見張り台の水平座標を維持せよ。真下から突き上げる。見張り台位置加速度3G。カウント3から」
『指示内容確認ヨシ。水平維持制御につき船体コンピュータ理解。カウント始める。3、2、1、アップトリム90度マスト船外回転。見張り台水平のまま加速度3G』
 船体はハイドロクローラを用いて周囲に風圧を生じ、先端を天へ向け起こした。
 一気の噴流であり、応じて至近の落雷のような重く大きな音がし、風が猛と起こって周囲に吹き広がった。
 彼女は風となって真っ直ぐ天へ向け持ち上げられた。轟と音がし、我が身が空気切り裂いて“打ち上げられる”ことを実感する。
 大きなステップラ(ホチキス)を開くように、船体とマストは口を開け、“く”の字から一本線となり、先端にいる彼女を中空へ打ち上げた。
 足が見張り台を離れ、風の中でみるみる視界が広がり、そしてお世話になった島の、山向こうが目に入る。
 ゴーグルは瞳の凝視を捉えると銃器と相互通信し、索敵(さくてき)照準モードに入る。
 超常の視覚すらも船体のシステムが把握することは過去に経験済み。脳波を読むらしい。
 12キロ向こうの現象を彼女の千里眼は捉えた。
 砂浜に乗り付けられた漁船と、降り立つ複数の黒ずくめ。
 超常の視力は捉える。彼らの手に警察官のものと見られる拳銃や警棒があるのを。
 照準システムが反応し、それら得物に四角いマークが付いて追尾が始まり。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【理絵子の夜話】差出人不明-2-

←前へ次へ→

 
「すいません。数学で判らないことがあって二人で唸ってました」
 理絵子は立ち止まって答えた。その一方で左手を小さく振り、クラスメートに“行って行って”。
「じゃあお先に」
 クラスメートがそそくさとその場を離れる。
「あ!……もう、数学なら佐久間(さくま)先生にお尋ねになれば」
 志村教諭は小走りで去る女生徒の姿を、階段まで目で追いながら尋ねた。
「彼女は塾なんです。ええ、おっしゃる通り、先生にお伺いしたいのは山々ですけど、手取り足取り聞いてしまっては自分で考えたことになりませんし、考えて答えを出さないと身につきません」
 理絵子は真顔で言った。
 すると、志村教諭は“負けました”と言わんばかりのちょっとあきれた顔。
 理絵子が自分をうまく言いくるめたと自覚しているのだ。
「なるほど、ね。あ、そうだ。あなたのクラスの桜井優子(さくらいゆうこ)、さっき屋上にいたわ。何が“見舞い”よ。ったくウソばっかり」
 この言葉の通り志村は理絵子の担任ではない。見回りで通りがかったのである。
「あら、そうでしたか。でも私はそう聞きました。それに、彼女のお父様が病気なのは本当ですよ」
「それは判るけど……言っておいて。出席時間危ないって。このままじゃ、また」
 担任ではないが、そうした“懸念行動”は把握している。
「判りました」
 理絵子は答えると、志村教諭に一礼し、教室を後にした。
 階段を降り、1階昇降口に出ると、その桜井優子がいる。
 年齢不相応に濃い化粧をした少女であり、セーラーは襟元を改造、スカートはひざの上までで、ぺちゃんこのかばんを背負い、靴はかかとを潰したスニーカー。
「よぉ」
 男のように喉をつぶした低い声で理絵子に話し掛け、ガム風船をぷかり。
「やっと帰るよ」
 理絵子は立ち止まって笑顔で応じた。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-122-

←前へ次へ→

 
 レムリアの作戦イメージ。マストを倒して前方に突き出させ、そこに自分が立ち、船体を90度起こし、その勢いで空中に放り出してもらう。
 さっき自分は“飛んだ”。だからこその発想であり、だからこそ怖くない。
 一番軽い自分なら、一番重い銃を持っても、最も高く飛び上がれる。
『了解した。船長許可を。但し、直上突き上げとしたいのでマストは内側へ』
『許可する』
 相原とアルフォンススのやりとりがあり、果たして船に駆け戻ると、超銃器FELを手にして相原が甲板に立っていた。大男らと同様、ウェットスーツ似の船外活動服を着ている。
 マスト最上部は見張り台になっている。それが眼前に下ろされている。
「君のイメージは遠くへ投げる動作だ。高く飛ばすには下から突き上げる」
 相原は砲丸投げのフォームで、しかし腕を真上に突き上げた。
 折りたたまれた腕を真上に真っ直ぐ伸ばす動作。
 マストは甲板側へ畳まれているが、これを180度反対側、船から船首方へはみ出す方向へ回転させつつ、船首を直立まで起こす。この際、見張り台は位置はこのまま、下から上へ動くように制御する。砲丸投げのフォームで言うなら、肩から肘までは船体の立ち上がり、そして肘から手首まではマストの役目。
 レムリアは見張り台に乗り、相原から質量20キロの粒子加速器を受け取る。
 そのままでは重くてとても取り回せないが。
「銃口を下にして、台の上に立てて。君は倒れないよう支えるだけでいい。打ち上げて、てっぺん付近で重力ゼロになる。それまでスコープとシンクロさせて待て。銃が軽くなったら、照準スキャンして、撃て」
「はい」
 傘を手にしてバス停で待つ如く、レムリアは超銃を見張り台に突き立てた。これで質量20キロは見張り台に託し、自分はトリガに手を掛け支えておくだけで良い。
「いつでも」
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-121-

←前へ次へ→

 
 ピギーバッグにお米や野菜を載せた男性が言ってくれた。
 子供達を中心とするこれまでの救助者を下ろす。
「自衛隊かえ?」
「いいえボランティア」
 低体温の女性はストレッチャーへ。
 一帯は津波被害の爪痕深く、しかし病院はかろうじて免れたという。距離はここから600メートルほど。
「ストレッチャーがあるなら私が引き受けよう。君はこの船でもっと多くの人を助けて欲しい」
「判りました先生」
 医師の申し出に応じ、女性を託す。
「お姉ちゃんまた行くの?」
 会話を聞いた子供の一人が訊いた。
「ええ、できる間、できる限り、繰り返します。みんな元気で。お年寄りとか参っちゃってると思うから、声を掛けてあげてね」
「OKだぜ」
「みんなありがとう。みんなの力で救うことが出来た人たちがいる。どうぞ誇りに」
「うん」
「お姉ちゃんまたね」
 しかし別れのセンチメンタルを認めてはくれない。イヤホンにピン2発。
『トレーサー009緊急信号!』
 シュレーターの声。
 
16
 
『準天頂地表撮れるか?』
 相原の声を聞きながら、レムリアは走って戻る。009は島のおじさん達に渡した番号。
 何かあったのである。
 視界に衛星画像が割り込む。島に船が接近しており、船には黒ずくめが数名。銃器らしき長いもの。
 また、強盗団なのか。どこまでしつこいのか。
『見通し取れるか。船を立てろ』
『島の山向こうになる。船体だけでは高さが取れない』
『レムリア聞こえるか。今、遠距離でレーザ撃ち込むことを考えている』
 相原の説明に対し、レムリアの答えは決まっていた。
 最も軽い自分が、最も強力な銃を手にして“飛べ”ば良い。シンプルな論理。
「FELを私に。マストに載せて飛ばして下さい」
 ビジュアルイメージを起こすと、船のコンピュータが脳波を捉えてスクリーンに出してくれる。最早テレパシーと何ら変わりは無い。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【理絵子の夜話】差出人不明-1-

←トップへ次へ→

 
 放課後の教室。
 がらんとした室内には、西陽が差し込み、あらゆるものがオレンジ色に染まっている。
 但し無人ではない。室内中ほど、セーラー服の娘が二人。
「なるほど。後々のことを考えると、そうか」
「だよ。そりゃ妥協したくないってのは判るけどさ。それはそれでお母様なりの『最良の選択』だったんだよ。親ってさ、あたしら幾つになろうと、どう成長しようと、いつまで経っても『子供は子供』なんだよ。秘めたる思いを消す必要まではないけど、ここは落ち着くまで低く構えておいて、その間に自分磨いておけばいいじゃん。そのほうが正々堂々と」
「後腐れがなくていいか」
「そゆこと」
「了解!やっぱりそうか。そうだよね。私も頭ではそうと判っていたけど、ココロの中ではすっきりしなくてさ。でもりえぼーに言われてすっきりした。ありがと」
「いいえ。どういたしまして」
“りえぼー”と呼ばれた少女はきらめく瞳で小さく笑った。
 黒野理絵子。14歳。中学2年生。
 幼さを残した小づくりな顔立ちに、きらめく瞳が人目を引く。学校中の男子の憧れ。
 背丈はどちらかというと小柄。陽光の中、少し紫を帯びて見える髪の毛を背中で束ね、緩くリボンで結わいている。
 教室の後ろのドアが無遠慮にがらりと開いた。
「何してるの?早く帰りなさい」
 志村(しむら)という女先生。生徒たちの人気はすこぶる悪く、年齢、容姿、言葉遣い、その他、彼らの評価を全て書き立てれば立派に名誉毀損が成立する。最も、平成の世に生を享けた生徒達にしてみれば、“高度成長期”など預かり知らぬ遠い過去。価値観の相違はいかんともしがたい。
「何時だと思ってるの?」
 教室から出ようとする彼女達に、志村教諭はさらに言った。
 生徒たちが最も嫌う行動のひとつ“余計な一言”である。しかも、理由の如何を問うわけではなく、詰問調、糾弾調。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-120-

←前へ次へ→

 
 船は甲板に家屋載せたまま湾奥へ進行を始める。炎と煙は未だ漂い、強い油の臭いは気分を害するほど。破壊された漂流物と船体との衝突が増え、応じた音がゴツゴツと船の各所から聞こえ、船体が左右に揺れる。
「……お手間は取らせません。あ、船で近場まで来ています。よろしくお願いします」
 交渉成立か。画面の隅に地図と行き先表示の赤いピンが表示され、同じピンが船体カメラの捉えた画像にも表示される。
「行って下さい」
『了解。甲板、落とせ』
 電話が終わるのを待っていたようである。木材破損のバリバリという音がし、船体が揺れ、水面へモノが落ちる大きな音。
『両舷全速、許容最大。INS使えない。各員衝撃と揺動に備えよ』
 最大船速22ノット。おおよそ時速40キロ。漂流物とぶつかる音が大きくなり、船体の揺動も激しくなる。INS(いんす)はその手の衝撃を抑える作用を持つが、使用不可能であり、壊れるんじゃないかと思うほどの音がする。乗せている人々から驚く声や小さな悲鳴も。
「まもなく港に着きます!」
 パニック防止に声を出す。それから程なく漁港へ達したが、地盤沈下で冠水しており、船を岸壁に付ける状況にあらず。
「停船できません」
「そのまま川へ。病院は川からアクセスする」
「アイ」
 川を遡って行く。元々そのハイドロクローラを使って宙に浮くことすら可能である。浅い部分へ進行することは難ではない。
 病院至近の国道橋梁に達し、投錨して堤防上にスロープを出す。
 突然の見慣れぬ帆船は行き交う人々の目を引いた。
「突然すいません。助かった方を33名、運んできました」
 レムリアは甲板から誰彼構わず言った。
「……病院ならあっちだ」
 右方。
「避難所は……」
「もう少し奥の高台だ。一緒に行ぐが?」
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

理絵子の夜話シリーズ【作品リスト】

night超感覚学級委員理絵子の夜話

new「差出人不明」(現在進行中)
01 02 03 04 05

「新たな自分を見つける会」(全25回)
01-05 06-10 11-15
16-20 21-25

「犬神の郷」(いぬがみのさと)
.
・あらすじ
本橋美砂の住み込みバイト先の民宿に正装の紳士達が訪ねてくる。以前この民宿で巫女として儀式を行った娘に用があるというのだ。理絵子のことだと知った美砂は彼女を呼び寄せる。理絵子は行動を共にしていた高千穂登与と共に紳士達から話を聞いた。古い伝承に従い人身御供が必要なのだという。超能力娘が3人揃って持ち込まれた話。自分たちの使命であろう。3人は紳士達の集落へ向かう。
このお話の目次のページへ
【第1話】へ
(全52回)
.
school21世紀になってまさか。あなたは今どこにいるの?超感覚学級委員理絵子の夜話2009
「桜井優子失踪事件」
. 
・あらすじ
理絵子にとって夢とは、超常感覚の発動による何らかの示唆。
年明け新学2期、寝汗にまみれて残った感触は「ごそっと抜け落ちた」。
しかし正体に対する示唆がない。腑に落ちぬまま学校へ行き、最大の友人が消息不明になったことを知る。
理絵子の知る限り、彼女は、伝承の足跡を求めて千葉へ向かったはずだが。
このお話の目次のページへ
【第1話】へ
(全78回)
. 
mobilephone携帯電話禁止論議に参戦。超感覚学級委員理絵子の夜話2008
「彼女は彼女を天使と呼んだ」
.
・あらすじ
黒野理絵子は中学2年生。教員が逮捕される猟奇的事件が発生、伴って彼女が霊能者であるという噂が立った。事件の背景にいわゆる〝学校の怪談〟があり、解決に理絵子が一枚噛んだからだ。
クラスの娘がこれを聞いて恋の協力を依頼してくる。やんわり断ると、彼女は〝天使〟と称される他のクラスの霊能娘の元へ向かった。
そんな折り、市内の生徒を集めてネットいじめの討論会なるイベントが持ち上がり、理絵子の相方として男の子が立候補。そのクラスメートの王子様なのだが、彼は他ならぬ理絵子に気があった。
そしてイベントの打ち合わせをした帰り道、彼は強引に理絵子の手を取り。
その状況を、彼女が見ていた。
このお話の目次のページへ
【第1話】へ
(全110回:このサイトとしての係る問題への意思表明はこちら
.
cherryblossom番外編・戦争と平和…宿題として勉強するもの?8月15日に寄せた読み切り短編
「武蔵野にて」
. 
bookこうして二人は知り合った。新学年についての彼女の考え。
「出会った頃の話」(全20回)
このお話の目次のページへ
第1話へ
.
■全作品リスト(目次のページ)へ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-119-

←前へ次へ→

 
『落下衝撃注意!』
 ダクトは件の鉄骨が食い込んでいたようで、その辺の接続が外れた。結果、ダクトにぶら下がっていた状態だったユニットバスは、支える物がなくなり、底が抜けたように甲板へ落下した。
 大きな音と衝撃、振動。女性は転倒した。とっさに抱きかかえたがどこか打ったか。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
 弱い頷き。
 ならば連れ出すのみ。但し、今度は甲板に落ちたため、切り落とした部分は甲板によって塞がれている。
 ならば壁面をぐるり切って穴を開けるだけ。
『状況』
「無事です。続けます。意識ありますが低体温。直ちに病院へ。船の設備だけでは困難と思われます」
「私だ。外で待機している」
 医師の声が壁越しに直接聞こえた。レムリアはレーザー銃を連続照射とし、ファイバ部分を手に持ち、カッターナイフのように扱い、ユニットバス壁面に穴を開け、映画のように蹴破った。
 レーザガンを甲板に放り出し、女性の腕を肩に回して連れ出す。担架が据えてあるので女性の身体を横たえる。低体温も度が進むと温かい物をあてがう程度ではダメで、心臓への負担をリアルタイムで観察しながら血液・リンパを温めるという必要が出て来る。
「電話借りてるよ」
 医師は言うと、アリスタルコスと共に担架を持ち上げ、女性を保持ユニットに搬送しつつ、首筋に触れたり、眼前で指を鳴らす動作。ちなみに“借りている”のは彼女の衛星携帯電話なのだが、手に持っているわけではないので、PSCを用いているよう。
「……突然のお電話すいません。派遣医師の佐橋と申します。ハイポサーミアで対処をお願いしたいのですが……いえ機材だけで、施術は私が行います」
 保持ユニットに到着し、担架のままベッドに載せ、心電図、体温、毛布。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「天使性」~天使のアルバイト・あとがき~

●あとがきの冒頭の能書き
 
1999年のクリスマス商戦。
東京駅八重洲口・大丸デパートでは、その販売促進ポスターに、きたのじゅんこさんの「遠い音色」という絵画作品を使っていました。要するに天使の絵なのですが、天使が売り上げアップに一役買ってるというわけで、「天使のアルバイト」と私個人は呼んだわけです。
「天使のアルバイト」
そのフレーズは即座に「本当に天使がアルバイトすることになったら?」という発想に結びつきました。
物語インスピレーションの到来です。すぐさま冒頭のシーンとストーリーの断片が幾つかイメージとして浮かび、制作に着手しました。こうして生まれたのが本作品「天使のアルバイト」(そのまんまやんか)です。当初流れのままにストーリーを追いかけ、とりあえず完結を見ましたが、スカスカで密度が薄い印象があり、いつか充実させたいと考えながら5年が経過、そこでようやく再度のインスピレーションを受けて手を入れ、科学的知見の最新化などを行い最終バージョンとしています。
 
●天使性
 
天使には神のそばに使え、神に近しい姿をするものもあれば、人に近似のものもあり、更には堕天使もいます。このことは少なくも、彼らが“人間型生命体”の仲間であり、しかし光と闇の狭間に存在している、とは共通項として書けるでしょう。すなわち人間にも同様の光と闇の揺らぎが存在し、それは否定するものではないことを示唆します。人は己の邪悪さに気づくと自己嫌悪を抱くことが、まま、ありますが、天使達の存在はその邪悪性を逃げる必要も、嫌う必要も、ないのだ、と教えてくれます。「ある」からあるのだし、「必要」だからあるのです。もし、邪悪さのかけらもない人間型生命体があるならば、その「人」は多分「人間くささ」もかけらもないことでしょう。そして、そんな人に守護する天使は必要ない。
あなたはあなたを見守る天使が、いた方が良いですか?それとも、必要ないですか?
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-118-

←前へ次へ→

 
 船長の声に答えると、緑色のレーザが出て、横一線の形状。プレゼンテーションでよく見る線状モードの如し。その位置を船長の指示に合わせ、若干上へ、右へ、時計回りに回せ。
『座標を設定した。ゴーグルは付けてるな?』
「しています」
『宇宙遮光モードにセットし、発砲する。指示あるまで動くな』
 ゴーグルをかぶると内側に文字が出る。発砲待機、宇宙遮光。ちなみに、宇宙では太陽の光が大気介さず届くため、非常に強力かつ目に悪い。このため、宇宙服は極めて濃いサングラスが内蔵されている。
『照準固定。極力動かすな。発砲まで3,2,1,0』
 向こうが見えなくなる。が、横一線と同じ位置が一瞬、バッと光ったのが判った。
 ごとん、と落ちる音がし、視界が開かれる。
 右肩あたり、目前に樹脂成形物が転がっており、切断面がどろりと溶けて煙をあげている。三角形のインゴットと化したユニットバスの一部である。
『標的の切断を確認。レムリア要救護者にアクセスせよ』
「はい」
 アタッチメントをベルトに引っかけ、そのまま仰向けで身を捩り、足で蹴って近づく。匍匐前進の腹と背が逆である。ユニットバスに手を掛け、中に頭を入れる。
 白すぎる肌は血行の低下を意味したが、目は意識の光持ってレムリアを見返した。
 和装の寝間着にはんてんを着た女性である。
 レムリアはゴーグルを外した。
「今お助けします」
 アタッチメントをずるずる引っ張ってレーザー銃を引き寄せ、中に持ち込む。
「船長レムリアです。ダクトを切断したく。引き続き照準および発砲願います」
『承知した。先端部の位置を目標に合わせよ』
 緑のラインに沿って切れることは判ったので、ラインを切断面に合わせる。
 自分が盾になって女性の視界を遮り、女性を束縛しているダクトパイプを上下2カ所で切り、落とす。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-117-

←前へ次へ→

 
 光ファイバの故にぐにゃぐにゃ曲げて設置できる。これを自分が持ち込め。
『レムリアに持たせろと?何度になると思ってんだ?』
 切断・焼き切るエネルギを持った光束である。光ファイバは反射を繰り返して光を送るが、多少の損失は発生する。それは熱になり、応じて温度が上がる。
「耐熱服を着ています。多少なら……」
 レムリアの物言いに相原の定量的な言葉が被さる。
「レールガンの先端は真空断熱構造になっている。1ブロックを外してそれぞれ両手に持って、それでファイバを挟んで保持。10秒15秒耐えればいい」
 レールガン。電磁射出だが、その銃口はジュール熱で1000度を超える高温になる。応じた断熱構造。そして電磁気力であることを生かし、弾道を変えて照準修正が出来るよう、多少だが先端が動く。更に、弾道に弾丸材料のアルミが溶けて溜まるため、メンテナンス用に外すことも出来る。それを使う。
『判った。言う通りにするぞ。オレは知らんからな』
 レムリアが一旦這い出すと、ラングレヌスが立っており、レーザ用の遮光ゴーグル、穴の開いた金属の塊、とぐろに巻かれた黒い蛇状の物体を渡された。金属の塊はレールガン先端部であり、とぐろは石英ガラスの光ファイバである。金属塊をタマゴ割るように二割し、出来た凹部にキラキラ輝くファイバの先端部を挟む。
 これを胸に抱いてとぐろを伸ばしながら、再び狭いところをユニット構造トイレットまで進む。先端をトイレ下端部へ向け、とぐろの反対を銃口にセットしてもらえれば、光ファイバの見ている画像が操舵室に投影される。
 イヤホンにピン。
『ファイバアタッチメントからの画像を確認。船体レーダの画像と照合、補正完了。予備スキャンを行う。左右に広がるビームが出るから私の指示に合わせて動かせ』
「はい」
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

天使のアルバイト-119-終

←前へあとがき→

 
 しかし、その追放が、自分にあった“甘え”のよりどころを取り払うこととなり、自分の裡に秘められていたもの……個性の範疇に属する超絶レベルの力があることを、顕在化させた。
「それからですね」
 リテシアが苛立った声で続ける。
「あ、はい」
「あなたの申し出のことです」
「申し出……ですか?」
 エリアは首を傾げた。気がついたらここにいたので、リテシア様に何か言った記憶はないが。
「『常にそばにいる』のでしょう?『ずっと一緒』なのでしょう?」
 エリアは目を見張った。確かに、それは、可能であればお願いしようと……え?
 聞き届けて下さると?
「承認します。彼女が生き延びたのはあなたの責任、彼女の担当はもういませんからね。仕方ありません。今後、彼女の担当はあなたとします」
 エリアは思わず笑みを作った。
 由紀子ちゃん!
 由紀子ちゃん。また、あなたのそばにいられるよ!
「本当……ですか?」
「そうする、と宣言してきたではないですか。自分で反故にするのですか?天使族の沽券に関わりますよ?」
「いえそのようなつもりは……申し訳ありません。でも、ありがとうございます。というかその……」
 お詫びと感謝を一度に伝える言葉ってないものか。
 リテシアは笑みを浮かべた。
「いいのですよ。その代わり、彼女の今後の人生は全くの白紙です。全て彼女が作り上げ、あなたがそれをサポートするのです。人ひとりの人生。大変ですよ。よろしいですか?」
「はい!」
 エリアは元気良く頷いた。
 リテシアがくすっと笑う。
「どうかなさいました?」
「しかしすっかり板に付きましたね。そのスーパーの制服姿」
「そうですか?」
 エリアは、ちょっと照れた。
 そう。母親も言ったが、彼女は病室から直接ここへ転移したため、スーパーの制服を着たままなのだ。
 その後、“シンデレラ服”が再支給されたが、彼女は結局、制服のままで過ごした。
 天に地の服、地に天の服。
 
 あなたには、レジ打ち娘の姿をした、天使が見えますか?
 
天使のアルバイト/終
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-116-

←前へ次へ→

 
『中の方はどうしておられる』
「判りません。声を出せる状態ではありません」
『SAR』
 船長が指示し、タブレット液晶に表示が出る。甲板上物体へのレーダ探査であり、詳細に見て取れる。
 ユニット構造のトイレであった。
 天井換気扇と、そこから繋がる排気ダクトが上からの力で押し込まれ、床面近くまでダクトが突き刺さっていた。そのダクトと壁の間に人体が挟まれている。何時間経過しているのか、洋式便器の上に立っている状態。
 それは苦痛であろう。しかし見方を変えると、一体型の狭い空間とダクトの故に強度が保たれ、生存空間が確保され、ダクト経由で空気の供給が持続し、生き延びた。このことは、例えば家一軒の耐震補強はムリであっても、就寝空間やリビングの一部などにそうした構造を取り入れ、サバイバルゾーンとする方法が有効であることを示唆しよう。
『要救護者の対角線上を斜めに切り取れ。そこに力学的負担は掛かっていない』
 船長の指示。ユニットバスを四角形で表現するなら、要救護者はその右上隅に形。
 対する左下を斜めに切り取って救助空間を作る。この狭い空間でそれをやるのは?
「レーザーを下さい!」
 レムリアは言った。光の刃で切り落とす。
『入らねぇぞ』
 アリスタルコスの指摘。
「私が入って撃ちます」
『そうじゃねぇ。銃がデカい』
「ファイバアタッチメントを使え」
 相原が言った。知らない名前にタブを見るととぐろを巻いた蛇のような機器。見たことがないが、相原は船のマニュアルを事細かに読んでおり、本来乗組員である自分よりも情報量が多い。
 何に使うのか。彼の意識をテレパスでスキャン。
 蛇のようなものは光ファイバの束。レーザガンの銃口に光ファイバの束を取り付け、直接届かないところへビームを送り届けるアタッチメント。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-115-

←前へ次へ→

 
 ただ、貫通はしていない。
「甘かったか」
 相原が歯がみする。そこでアリスタルコスがFELの銃口を再度振り向け、マシンガンモードで発砲。
「もう一度やりゃいいだろ」
『作業を繰り返せ』
 船長の指示を得て、レーザによる穴開けと火の玉によるくりぬきを連続的に実施する。
 プラズマ3回目で火の玉が向こう側に抜け、木の幹に空洞が生成された。
「作業完了」
『本船を沈降させる。貴殿ら……』
「適当にどいておくよ」
 男三人は浮遊してきた漁船に移った。その間に船は一旦水面下に沈み、再び浮上してきた時には、マストを家屋二階に貫通させ、吊り下げた状態。
 ザァザァと家屋から水が流れ出、鉄骨に串刺しされた一階部分が姿を見せる。本当に生存者がいるのかと思う。
 家の中からラブが出て来た。びしょ濡れの身体をぶるぶる振って水滴を飛ばす。レムリアは甲板へ出て来てラブから情報を受け取った。
「トイレのようです。様子を見てきます」
 レムリアは言い、家屋の下で仰向けになると、ラブを先に行かせ、後から小柄を利して入り込んだ。基礎や骨組みをジャングルジムのようにかいくぐってラブについて行く。
 少し空間があり、凹んだトイレドアパネル。
 ユニット式のトイレの上にはその鉄骨。重みでドアが上から押さえ込まれて開かない。逆に言えばそれゆえ気密性が保たれ、水の浸入が防止された。排気管が伸びており、空気自体はここを介して確保できたか。
「救助隊です。声が聞こえますか?」
 僅かな声と、ツメで引っ掻くような音。リズムを刻んでおり、人の手による音。
「今助けます。もう少し頑張って下さい……操舵室及びファランクス。映像見えてると思います。どうしましょう。ムリにドアを開ければ重みが一気にという気がしますが」
『底を抜け』
 船長の意志は明白だった。後は方法。中に人がいる。綺麗に底をどうやって抜くのか。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

天使のアルバイト-118-

←前へ次へ→

 
「戻って参りました」
「戻したんです。あの姿のまま、人間世界にいることは許されません」
 呆れを含んだ声音で、リテシアは言った。
 日頃の厳かさからは想像も付かない“人間くさい”トーンであり言い回しである。エリアは思わず目を瞠った。
「はあ。申し訳ありません……」
「謝る必要はありません。わたくしが力不足だっただけです。全く……まさかと思いました。あなたは、いえ、あなたに隠されたものを引き出してしまった、ようやく出てきたと言うところでしょうか」
 少々苛立っているような、悔しがっているような言葉。
「あの……?」
 エリアは首を傾げた。
 隠された?ようやく出て来た?
 自分に何か変わったという自覚はない。またやり過ぎて今度は連れ戻された。
「判りませんか?」
「はい」
「では教えましょう。ひとつ、あなたの素質は通常のカリキュラムで見いだせるものではなかった。わたくしどもも型にはまったカリキュラムにこだわりすぎて、直接知覚する努力を怠った。もうひとつ、わたくしの能力が不足しており、恐らくは、彼女……由紀子ちゃんを救いたいというあなたの気持ちが、わたくしの封印も破ってしまった」
「え……」
 エリアは驚いて息を呑んだ。
 リテシアと自分の、いわゆる“超能力”の差は厳然たるもので、同じ土俵で比較する必要すらないほどという認識。
「あなたの彼女に対する友情、或いは命への強い気持ちは、上位の方々へ聞き届けられ、上位の方々が手をさしのべて下さるレベルだった、ということです」
 リテシアは“観念した”そんな気持ちと共に言った。
 それが“思わぬ結果”“ひょうたんからコマ”的な認識であることをエリアは知る。超感覚が教えるところによれば、まず、自分は今回、本当に半分追放の形で地上に落とされた。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-114-

←前へ次へ→

 
「君のフィアンセ氏はいちいち突拍子もないことを思いつくようだな。会社では煙たがられるか、歓迎されるか、極端ではないかね?さておき名案だが、どうやってくり抜く」
 難題。レムリアは思った。しかし相原は一瞬の逡巡もない。
「入らないタッピングはまずキリで穴を開けますね。レーザで幾つか穴を開けて」
 そこで船長は唇の端に笑みを浮かべた。
「プラズマ撃ち込む、か。穴だらけならプラズマ数発でくり抜けるな。そこまで考えていたか」
「おっしゃる通り。マカロニを作るにはまずレンコンですよ。流木が水面上に出るまで上げて下さい」
「了解した。ラング、私の銃を持ってアリスと共にレーザ照射」
「アイ」
 大きな穴を開けるとき、沢山の小さな穴を開け、境目のもろくなった部分を折る・割るなどして穴同士を接続し、大きな穴にする方法がある。
 相原が提案したのはそれである。レムリアは舌を巻いた。そして気づいた時には、未来の夫はプラズマガンを背負って操舵室を後にしていた。
 命令が飛んで船が動き、甲板に家を載せ、そのまま少し海面上に押し上げる。帆柱が海面に顔を出す。
 一方男達は倒した帆柱の上に立ち、まず、大男二人がそれぞれ銃器でレーザ光線を照射。アリスタルコスの機体がレーザガンであり、出力最大の紫色を使って穴を開ける。
 一方ラングレヌスはひときわ長身の銃器を両腕で支えて差し向けている。FEL(Free Electron Laser:自由電子レーザ)マシンガンである。任意波長のレーザ光線を生成する。ここでは紫外線レーザを使用。FELは電波からガンマ線までまで作れるが、木材に穴を開けるという観点で高温貫通力を重視。
 2216個の穴が開いたとかで相原が火の玉を放つ。今度は最前のリングとは真逆で小型高温のエネルギの塊を作る。木の幹に撃ち込むと、燃焼と溶解の中間のような様相を示す。水分は湯気となり、部分的に発火して小さく炎を発し、そして焦げ臭い。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゴ号の挑戦~東北地方太平洋沖地震~【魔法少女レムリアシリーズ】-113-

←前へ次へ→

 
 シュレーターが喚呼し、船が水中に潜り、応じて水面が画面を下から上へ動き、暗くなって照明が点灯。状況を映し出す。
 1階部分が水没した家屋。と、漂う……犬の亡骸。
 首輪にリード……逃げられなかったに相違ない。
「ああ」
 子供達も見てしまったが仕方有るまい。
「これマータだよ」
 落胆の声があった。ラブの犬友ということか。
「スキャン完了。内部はガレキが密集し取り除きながら到達の要あり。鉄骨2.7トンと推算。現有人力、ウィンチ力では対処困難」
 アリスタルコスが淡々と。
「甲板に家ごと載せて持ち上げろ。外から壊せ」
「水圧と浮力で保持されている部分もある。持ち上げると全荷重が1階部分に加わって崩壊の危険あり」
 シュレーターの指摘。
「帆柱2階に突っ込んで吊れ」
 相原が言った。船のコンピュータが動画に起こしてシミュレーション。しかし1階天井裏に刺さっている流木があり、これを抜かないと帆柱の耐荷重を超過し吊れない。そして、流木があるからこそ2階の荷重を受け止め、その底が抜けるのが抑止されている。
「何キロ落とせばいい。全部じゃないだろ。流木の端や真ん中切るなり燃やすなり出来るだろう」
「200キログラムだな。しかし家屋からはみ出ている部分を切り落としても70キロ不足する」
「なら真ん中を切り落とせ」
「だから真ん中を切ったら折れて元も子もないぞ」
「言い方が悪かった。真ん中をくり抜け。マカロニみたいに」
「木の芯を抜くの?」
 レムリアはようやく合点が言った。“真ん中”の意味が違った。
 コンピュータでシミュレーション。幹の太さ平均47センチに対し15センチくり抜けば良い。
 これを見て船長が呆れたような、笑いとも取れるような、短いため息一つ。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«天使のアルバイト-117-