魔女と魔法と魔術と蠱と【6】
その晩の〝生放送〟は、彼女自身の出演はなかった。
ひたすらな心臓マッサージと、結果息を吹き返した男の子の姿で〝1本出来上がり〟となった。
最も、彼女自体、栄養剤を点滴してもらう状態だったのだが。
以降数日。
展開してきた現地の軍に後を託すまで被災地をめぐり、一行は東南アジアで所定のルートに復帰した。
この取材行では、クルーが加わるに際し、彼女がひとつ条件を出した。
日本の〝蚊帳〟を持って来いと言ったのだ。
「この地域で蚊に刺されることは、そのまま死に直結することもあります。マラリアなど、恐ろしい伝染病を蚊が媒介するのです」
蚊帳は有用なのだ。
「どんなに効き目のよい虫除けを贈って頂いても、どんなに性能の良い殺虫剤を贈って頂いても、いつかは薬が切れて無くなってしまう。一過性でなく、定期的にずっと供給し続ける必要がある。それは大きな手間です。でもこれなら、現地の人でも直して使い続けられますし、似たものを作れます」
無くなったら店で買って来ればいい……それは所詮、先進国の発想。
手足にしがみついてくる子ども達と遊ぶ。
「あとは、正確な知識です」
そこで、日本の有名らしいタレント司会者が、こんなことを言った。
『明日は……』
赤道直下の島国。
「ええそうです」
『地震がありましたよねぇ……』
その地域を震源とするマグニチュード9という超巨大地震と、伴う津波により、22万を超える人命が失われたことは、人類災害史の21世紀の頁に記載され、後世に伝えられるであろう。
『でしたら例えば、我々が津波の映像を用意して現地の方々に見てもらうことは、〝知識〟という点で』
「ええ、それはもちろん大きな力になると思います」
彼女は、否とは言わなかった。それ自体は悪いことと思わないから。
ただ、せっかく映像をもらっても伝える手段を思いつかぬ。この村もそうだが、電気をあまねく送る設備が整った国土ではなく、テレビジョンという装置を各家庭が持っているわけではない。
『我々もお役に立ちたいので』
満足そうな顔で司会者が言い、宇宙からダウンリンク。パラボラに降ってくる資料映像。
チェック用のテレビモニタを珍しげに覗き込む子ども達。
不思議な感慨がある。
できるならやっちゃえばいいじゃん。
何もない中で何が出来るか。
同時存在する二つの世界観。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【34】(2009.07.04)
- 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【35】(2009.07.11)
- 気付きもしないで【目次】(2009.07.09)
- ブリリアント・ハート【34】(2009.07.01)
- ブリリアント・ハート【35】(2009.07.08)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 魔法少女レムリアのお話(2008.12.04)
- ブリリアント・ハート【34】(2009.07.01)
- ブリリアント・ハート【35】(2009.07.08)
- ブリリアント・ハート【33】(2009.06.24)
- ブリリアント・ハート【32】(2009.06.17)


コメント