ブリリアント・ハート【3】
閑話休題。
「はい、いいですよ」
レムリアは女の子に微笑んだ。
女の子は学校名と氏名を名乗り、
「どうして、そこまでできるんですか?」
と、一言訊いた。
「え…」
レムリアは回答に窮した。
問いが茫洋としすぎていたせいもある。真意を見抜けなかったせいもある。
がゆえに、一瞬、空白を作ってしまった。それがまずかったのであろう。
「ほら、わけの判らないこと訊かない。もう終わったから。出て出て」
女の子が引きずり出されてしまう。
「ちょっ…」
引き留めようとするが、それをやると、この後の“予定”が大きく狂うことをレムリアは承知している。追ってわがままと言われることは目に見えている。どころか、女の子のせいにされてしまいかねない。
引きずられながら、こっちを見ている女の子を、レムリアは、ずっと、見ていた。
会場をホテルレストランに移動、“予定”をこなす。博覧会の役員と昼食会。テレビ局のインタビュー。
インタビューはありきたりのもので、日本の何が好きか、とか、好きな食べ物は、とか。もう少し大義名分の方を訊いた方が良いのではと思うが、そもそもの視点が“王女サマのご興味は”だけに相違ないので仕方あるまい。日本語ペラペラでは尚のこと。
「京都の懐石料理が…」
無難な線だろう。実際にはすでに20回以上来ていて、東京の知り合い宅に寝泊まりし、秋葉原でラーメン食べたりしている。ちなみに、一番好きなのはその過程で一度連れて行ってもらった日本料理店の西京焼きである。魚の切り身に1200円。全くもって味のためだけにお金を払う代物であり、本物の贅沢ではないかと思うのだ。もちろん、もっと高級な切り身もあるだろうが、彼女としてはそれが好き。
インタビュー終了。このあとはホテルで静養後、知事や市長と晩さん会、の予定。さっきのお役人が慇懃無礼に迎えに来て…
ガイコーというヤツだ。ただ、国の客とはいえどだいお子様なので、ソーリダイジンが出てきて云々とか、大仰な行事は組まれていない。これは大げさになるほど負担と弊害が増えるから、という彼女の自国の意向もある。だから本国からの同行者もなし。
とはいえ、考えただけで肩が凝る内容なのは確かである。とりあえず“静養”させてもらうことにする。
ホテル最上階。特殊なキーを使わないとエレベータはそこへ行かず、フロアに部屋はたった一つ。
レムリアは本日、この部屋の住人。
「では、後でお迎えに参ります」
世話役であろう、年齢的にはおねーさんという感じのメイドさんが一礼してドアを閉じた。
(つづく)
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