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彼女は彼女を天使と呼んだ(12)

 自身超能力を持つからこそ、占いの存在意義には疑義たっぷりなのだ。すべては決まっている、アカシックレコードに書いてある。というのが占いの〝論拠〟だが、だとしたら人間の自由意志の存在意義がなくなってしまう。自分に持たされた、この類い希な能力は何なのだ、となるのだ。最初から決まっているなら、判ってしまっても、そうでなくても、同じ事ではないか。
 悩んだり悲しんだり、果ては戦争で殺し合い。神は人間を弄んでいるのか?そんな事はあるまい。『神は自らに似せて人間を作った』……それこそ霊能論の諸元であろう、聖書冒頭のこのフレーズに矛盾する。
 もちろん、真剣に占いを行っている、という人もあるだろう。ただ、やり遂げようという意志は成功の礎となり、そのための知恵や工夫を生み出し、逆もまた真なり。占っていると言うより、人となりを見抜いて解決に向き不向きか助言している、という方が適切なのではないか。
「事態が変化したらまた来なさいって」
 北村由佳はそう言うと、立ち上がった。
「その霊能者ってどんな人?」
 理絵子は〝誰〟とは言わずそれだけ尋ねた。自分が彼女をライバル視しているとは思われたくないし、昨日の美砂の言葉もあるからだ。『怖くない、大丈夫だ。言われればもう周りなんかアウトオブ眼中』……今は何を言っても雑音に相違あるまい。
「かわいらしい人。……天使みたいな」
 北村由佳は言い、そよ風のように去った。
 恋する乙女の代わりに、背後から香水の匂い。
「えらく変わったな、彼女」
 フーセンガムをぱちん。桜井優子(さくらいゆうこ)という。同じ学年だが年齢は一つ上。昨年出席日数が足りなかったのだ。道行く人は彼女を見て〝不良〟という目線を送るであろう。
「恋でもしたんか?」
 鋭い。
「でも、あんな浮わついてちゃだめだな。信じられる核があるなら落ち着いていられるもんだ」
 それは真実だろう。
「経験有り?」
 理絵子は訊いた。
「ガッコ来るより一緒にいたかったわけ。しまった誘導尋問に引っかかった」
 珍しく照れたような薄紅の頬。だから出席日数が足りなかったのか。
「あはは。でも正直、どう動いていいか判らない」

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