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彼女は彼女を天使と呼んだ(47)

 彼はしょぼくれた。
 だがしかし。気持ちを一方的に押しつけられても困るのだ。
「考えてもいなかったことをいきなり結論出せと言われても無理。だから、考えさせて」
「判った。ごめん……」
 多分、彼の言葉を最後まで聞き取る前に、理絵子は走り出した。階段を駆け下り、駅前広場を回り、横断歩道を渡って住宅街の坂道へ。
 一人になって、ようやく事態を反芻する余裕が出てくる。ぶっちゃけた話、好意を言われたのは初めてではない。靴箱の震える気持ちを幾つ持ち帰ったか。
 ただ、それらには至極冷静に対処していたと自分でも思う。幼い、と言ってしまっては失礼だが、心動かされるような内容の物は正直言ってなかった。理想が高すぎるんじゃないか?と手紙の存在を知る級友は言うが、同情と妥協で付き合うなと桜井優子は言う。個人的には、恋愛は無理矢理しなくちゃいけないものでもない、そんな程度。
 端的に比較すれば、彼の発言は文字という1次元に対し、目の前でリアルタイムという3次元であるコトが違うだけで、内容的には違わない。可愛い好きだ。端的にはそれだけだ。
 なのに自分のココロのこの反応の違いは何なのだ。
 崩したくない、という底意はある。会議が終わるまで〝仲間〟を維持しておきたいだけという、底意地の悪さは自覚する。
 1次元でなく3次元で来た、という彼の気持ちを斟酌したい、という気持ちも確かだろう。その背景には図書館での本橋美砂の一言がある。「考える余地は?」
 問題は、彼とは向こうしばらく顔を合わせる必要があること。
 そこへ考えたくない既成事実が問題を呈する。北村由佳の気持ちはどうするのだ。
 今は先延ばしした。それはいいが、リミットが来た時、どう答える?

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