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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【12】

「リクラ・ラクラ・シャングリラ」
 この呪文はいわゆる天国の一部、妖精の国フェアリーランドへと飛ぶためのもの。
 私たちは基本的にそこの所属。それぞれに大地の女神・地球自身の精霊ガイア様の任務を帯びて、地上世界へと〝派遣〟される。
 もちろん、人間さんを連れ込むなど禁忌中の禁忌。
 だけど、男の子の心が壊れることと、クモたちの願いと、禁忌と、三つを比べたならば。
 だから、私は、ガイア様に。
 どさっ。
 音を立てて草の上に倒れ込む私たち。
「いてっ!なんだおめえ!」
 男の子が先に立ち上がり、私を見下ろして怒鳴ります。私はまだ起き上がるために手を突いたばかり。
「あ……」
 男の子の目が、私の背後の何かに気付いて、真ん丸に大きく見開かれます。
 彼が何を見たのか、私は私の身体に落ちた影で知ります。
 草の上をゆっくりと歩く恐竜サイズの巨大なクモ。
 トンボが70センチもあった時代、当然、クモにも巨大な身体を持つものがいました。ただ、何せ〝骨〟がありませんから、地上でこのサイズの化石発見という話は聞きませんが。種の名前ですか?私たちは大グモさんと呼んでいますが、メガアラクネより大きいですから恐竜に倣ってギガノトアラクネとでもしましょうか。
「大丈夫、連中は私ら取って食ったりしないから」
 私の声に、巨大なクモが足を止めました。
 8つの目でこちらをギョロリ。
〈その子は人間では?〉
「大丈夫。彼はあなたたちを気持ち悪いと言わない」
〈ああ、先ほどお願いという声を聞いた。そうですか、エウリディケさんがその子を〉
 妖精の服はクモの糸、そんな話を聞いたことのある方もあるでしょう。
 ここはクモに代表される〝不快害虫〟……外見がグロテスクという理由で忌み嫌われる節足動物たちのための天国。
 私たちの服はここに住まうクモたちの糸を集め、織り姫アラクネの手で織られ、丈夫で質の良いフェアリーシルクの布地になります。クモの網で魚が捕れる。先に書きましたね。そのくらい丈夫なのです。

つづく

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