« 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【16】 | トップページ | 気づきもしないで【8】 »

彼女は彼女を天使と呼んだ(85)

意志:理絵子が隠している力の存在をこの少女に知らしめることになるが良いか?

「それがどうした。あんたみたいなのにうろつかれるよりはマシだ。私を殺しに来たかい。御免被る。帰りな。住んでるお城にさ」
 意志を理絵子に寄越すこと。それは同時に、理絵子が相手を知ること。
 この霊魂は元は〝人〟であった。高千穂登与の儀式に基づいて召還され、理絵子を倒すために遣わされた古い時代の戦士だ。
 その過去は勝つことを願い、しかしついに適わなかった戦士の亡霊。
 怨念の故に怨霊となり、魔に与しその軍門に降ったのである。使命は生きる者に業苦と屈辱を与えること。発狂の醜態をもたらすこと。
 理絵子は背後、高千穂登与を振り返る。
「高千穂登与。縛りなさい。こんなものがこの世に出てきていいの?封印して閉じなさい」
「いやだ。いやだ!私には出来ない」

 意志:お前をもらい受ける。

 高千穂登与は髪の毛逆立てて絶叫した。更にもう一つ何か加われば、彼女は発狂すると明らかであった。
 対して高千穂登与の行動は、さながらケンカに負けてヤケになった子供であった。手にしたロザリオを霊魂へ投げつけた。
 高千穂登与の手から十字架が離れる。以下時間にしてコンマ3秒。
 まず、霊魂が円の中でふわりと浮き上がり、毛布の如きモノを左右に広げる。今からこの魔法円を脱し、襲いかかるぞ。
 魔法円を形成する、ということ。
 略して円を切る。この行為は〝結界〟を形成することに他ならない。あの世の介入を制限付きで許可し、その範囲を定義するのである。それは通常円の形に沿い、円柱状に形成される。
 その円柱から魔性の者は出られない、のであるが。
 結界を維持するのは円を切った当人の精神力である。
 と、理絵子は理解した。魔術はお門違いであって詳細までは知らない。但し今、高千穂登与の精神力は萎縮する一方。
 選択肢はないのであった。
 匙を投げるの言葉のままに投擲されたロザリオを、理絵子は手を出しその軌道を遮り、手中とした。

→次

|

« 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【16】 | トップページ | 気づきもしないで【8】 »

小説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 彼女は彼女を天使と呼んだ(85):

« 【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【16】 | トップページ | 気づきもしないで【8】 »