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彼女は彼女を天使と呼んだ(106)

 希望を持たせるように言ってみる。
 しかし白髪老眼鏡氏の〝フィルタ〟は次の行動を既に決めていたようであった。
「バカバカしい。学校は仲良しクラブじゃない。何度も言わせるな、会はお開きだ。君は学生の本分というものを……」
 その顔は〝権力者の余裕〟というか、説教モードというか。
 でも、手綱を渡す気はない。
「学生が何より鬱陶しいのは唯々諾々と先生の言う通り、です。上っ面だけの〝いい子のカタチ〟を押しつけられるより、耳の穴かっぽじって意見聞いてもらった方が余程嬉しいですよ。打てば響く。判ってくれてんじゃんって実感が持てるんです。自分たちの学校だって意識と愛着が沸くってもんです。この手の事件で私たちの仲間が命を絶ったのは、言い出せるような環境じゃなかった、ってのが背景にあったのはご存じの通り」
 多少、いや相当に嫌みな物言い。漱石じゃない、誰の流儀だっけか。
 再び白髪老眼鏡の頬が朱色。
「失敬!き、君は失敬だ!」
 理絵子を指さし吠える。そこまで言わないと判らないくせに、判った瞬間火が付く。
 真ん中がないから冷静な議論にならない。
 要するに我慢の限度を超えるか、私論崩壊の危機を感知すると、一足飛びに力ずくで幕引きに走るのだ。
 人はそれをキレると言うのでは?
「何様のつもりだ全く!」
 でもそれは本音だろう。
 言葉にするなら。
「子どもは特定の型枠に収まってろ。言うこと聞いて黙ってろ。波風を立てるな。余計なことしたら権力物言わすぞ」
「出て行け!こ、校長に、そうだお前たちの校長に連絡する!かわいい顔してとんでもない輩だ」
 で、実際このように言われるから困る。その実全く人間的な感情的反射なのだろうが、それが生徒の立場からすると、権力背景にした脅迫に聞こえるという配慮が足りない。最も今の台詞の場合、露骨にセクハラでパワハラと思うが。

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