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【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【21】

 しかしムカデは、やかましく音を出しつつも、ゆたか君の独白をただ黙って聞いていました。
「それでオレ、そういう連中のこと調べたんだ。クモが電灯のそばに巣を作るとか、あんたらムカデも長い身体をぐるんと丸くして子どもを守ったりとか、人間は気持ち悪いってだけで殺すけど」
 何も知らないクセに勝手に決めつけて殺している。
〈確かに人間は差別が上手だな〉
 ムカデはそうコメントしました。
〈何か違う。それを理由に傷つける。命ある者が理由もなく他の命を傷つけるのは無意味だし非生産的だ。非生命的と言った方がいいか。人間さんは自分も生き物であることを認めたくないのかね〉
「難しくてわかんないよ。……ってか、オレ達お前たちのこと虫けらって言い方するけど、何かすげー」
「知性は人間だけのモノじゃないって言えばいいかな?ムカデにクモもそうだけど、特に肉食の生き物は絶対にアタマ使わないと生きて行けない。本能だけで狩りが出来ると考えるのは人間さんの大きな間違い」
 私の言葉にゆたか君は何も言いませんでした。ムカデの背中でただじっと前を見たまま、何か考え込んでいます。
「翅のねーちゃん」
 私のこと。
「はい?」
「あんた、見てたんだよな。オレが何してたか」
「君が気にも掛けなかった全ての動物と虫たちが私に教えてくれた。君がひどいことをしている。そして君を助けてあげてと」
〈それがクモたちか〉
「そう。だから私は君を助けた。君は傷付いている。そのせいだ。そう思ったから」
「なのかなぁ。オレ自分で自分のことが判らない。でも、悪いことをしたな、とは思うんだ」
〈なら、それでいいではないか〉
 ムカデが言いました。
「え?」
〈起こってしまったことは仕方がない。元に戻らないからだ。しかし、二度同じことを起こさないようには出来る。今後、君に大切なのはそういうことだろう。さぁ私の約束はここまでだ。君はここをどう越えるかね?〉
〝悲しみの風吹く谷〟

つづく

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