【妖精エウリーの小さなお話】クモの国の少年【29】
糸玉が風をはらみ、落ちてくる雨の滴のように扁平になり、ゆたか君の身体を上方へ持ち上げます。
言わば凧。
「妖精のお姉ちゃん!」
こちらを見て叫びます。私に追いつこうというのでしょうか。
「今行くから!」
落下する危険を顧みず、何という勇気でしょうか。
でも、私の方が遥かに身体が軽い。
距離は逆に開きます。
すると。
彼は再度背後に手を回し、糸玉に突っ込みました。
無造作という感じで糸を塊ひとつかみ。
彼の意図を私は悟りました。その糸の塊には子グモ達。
私よりも軽いもの。その糸と子グモ達。
「先行け!」
子グモ達はお尻から糸を放ちました。
私の顔に糸が触れる。
私は掴みました。しかし、ゆたか君の身体はどんどん視界の向こうに小さくなって行きます。
細い細い糸を伝って、子グモ達が登ってくる。
飛ばされながら、浮きながら登ってくる。
〈妖精さん。今……〉
小さな囁き。
クモ達は、私に、追いつきました。
凄い勢いで糸出して私の身体をぐるぐる回ります。風を孕みはためくトガを身体に巻き付けてくれているのです。
(つづく)
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