ブリリアント・ハート【27】
7
電車が走る間に、レムリアはルート選択の主旨を説明した。
あすかちゃんが納得する。
「そういうことか…」
「そういうこと。私もさ、一瞬アホかと思ったけど、確かに言われてみれば裏をかくルートかなぁと。持つべきはオタクの知り合い!?」
「あはは。でもすごいね。何かサスペンスドラマのアリバイトリックみたい。…でも日記に書いたらダメ、なんだよね」
「いいよ」
レムリアは言った。
あすかちゃんは拍子抜け。
「えっ?」
「構わないよ。だってどうせ誰も信じないし。っていうか、信じられないようにしようとしているわけで。そうなると、真面目に書くと逆にあなたが変に思われるかも」
「…あ、そうか、そうだよね。残念。私だけの秘密か」
あすかちゃんはしかし、小さく笑った。
その笑みは明らかに彼女が、事態を“楽しんでいる”ことを表す。
レムリアは安堵の気持ちと共に、自分の頬が緩むのを感じた。うつむきがちで弱気な女の子はどこへやら。あすかちゃん、あなた、輝いてる。ブリリアントに光ってる。
そんな自分に気付いてる?
「ふふ」
あすかちゃんが笑う。くすぐったそうなその笑みは、何かいいことでも思いついたか、そんな風。
二人して心理的に小休止の状態になる。その間に電車は時刻通りに進行。隣駅に着き、出発し、直線の高架線路を駆け、最高速度まで加速し、用水の調整池をコンクリート橋で渡り、減速してプラットホームへ。
放送が流れ、会場シャトルバス乗り継ぎ駅である旨伝えられる。一見してそれと判る家族連れや、連れだってのお出かけ組が席を立つ。
電車が止まってドアが開く。
「シャトルバスご利用の方は改札を出て右側へお越し下さ~い!」
ホーム上では係員が拡声器で案内しており、降車客達がその案内に従ってぞろぞろ歩く。
二人も流れに混じる。流れの中の人々はガイドブックを見たり、仲間同士のお喋りに興じており、誘拐王女某なんぞ端から頭になく、バレる心配はまずない。
(つづく)
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