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ブリリアント・ハート【31】

「いいええ」
 レムリアは会釈した。
「おもしれーな、ねーちゃん」
 頭髪に白いものが混じる、小柄で色黒の男性が言った。
「ありがとうございます」
 この手のマジック…言うまでもなく“特殊能力”のなせる技である。すなわちタネなしの本物のmagic…
 文字通り“魔法”である。あすかちゃんが唖然となるのもある意味当然。
 衆目を感じる。期せずしてマジックショーになったと感じる。
 両手を祈るように組み合わせる。一旦離し、左手だけ握ると、各指と指の間に細長いスナック菓子“プレッツェル”がニュッと顔を出す。
 プチ喝采。周囲が何事かと覗き込んだので、もう一度。
 成功し、どよもす。
「はいどうぞ」
 あすかちゃんはじめ、近隣に配る。
「あなた何者?」
 プレッツェルをかじって問うあすかちゃんに微笑み返し。
「よろしかったら」
 その男性にも差し出す。
「ああ、ありがとうよ。そうか、ねーちゃんニュースの姫様に似てんだ」
「は…」
 男性はあっさりいい、プレッツェルをかじった。
 レムリアは一瞬返す言葉がない。周囲の人々もそのニュースは知っているようで、自分の顔に視線が集まる。
 これはまずい。
 一計。
「そうなんですワ、あの子がテレビに出るたび、似てる似てるあちこちでいわれるデ、かなわんのですワ~」
 この地の方言。
 なんか、おばさん臭い響き。
 衆目が黙ってしまう。接尾語、イントネーション、付け焼き刃だから間違えた?どこか変だった?
 一瞬の後、男性はガハハと笑った。沈黙は“王女某”のイメージで自分を捉えたため、方言とのギャップにリアクションできなかっただけ。
「そうかそうか、そりゃ間違うワ。でもそうするとあれだな。その検問か?ねーちゃん見つかると面倒だワナ」
「あ、それいかんワ。そっくりダデ降ろされるかも」
「それいかんいかん」
「隠せ隠せ」
「こっちおいで」
 周囲の大人達が勝手に動く。かくてレムリアは文字通りSPに保護される王女の如く、人垣に埋め立てられた。
『検問です。少々お待ち下さい』
 運転手が放送した。

つづく

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