ブリリアント・ハート【37】
9
シャトルバスは市街地の道こそやや混んだが、検問等に掛かることはなく、駅前バスセンターへの登坂スロープを目前に信号待ち。
『ご利用ありがとうございました…』
運転手が放送し、バスが動き出す。乗客達が準備を開始。
そこで電話。東京。あまりいい予感はしない。レムリアは再びカーテンの陰。
「…何?」
言って生唾を飲み込む。
『今どこだい』
「あと1、2分ってとこ」
その回答に東京は黙った。レムリアは焦りを感じた。その沈黙は手遅れと呼ばれる諦めの意思表示?
「…やばい?」
返事を急くように尋ねる。東京は一回う~んと唸って。
『…かも判らん。手品が上手でウェストポーチを身につけた良く似た娘を、会場行きのバスで見かけたと』
バスが交差点を横切り、カーブしているスロープを登りに掛かる。その車窓、今しがた横切った交差点を、パトカーがサイレン鳴らして駅へ急行。
ビルの中に組み込まれた立体ターミナルにバスが乗り入れる。薄暗いコンクリートの空間に反響するエンジン音。
『警察は…』
東京が言いかけたそこで電話が切れてしまう。コンクリート構造物に入り、780キロ彼方からの衛星電波が遮られたのである。
心臓がドキドキ言い始める。バスの速度が落ち、他の乗客達が降りる準備を始める。
と、前方に別の乗り場からのバスがニュッと顔を出し、シャトルバスは一旦止まる。
降車場とおぼしき場所では、運転士と同じ制服の男性がこちらを見、手招きしている。手に座布団抱えているあたり交代の運転手なのだろう。そこまでバス数台分の距離だ。
じれったいと思う。すぐそこじゃん早く着いてよ。
着くバス出るバス交錯し、バスはなかなか前に行かない。
降車場すぐ手前からバスが出発し、ようやく前方に進路が出来る。バスは最後の一ふかしとばかり加速し、降車場に停車する。
『到着です。JR方面は前方の…』
ドアが開いて客が降り始める。
降車客は2方向に進路を取れる。駅コンコースか、バスの系列会社の駅前デパートか。
(つづく)
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