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桜井優子失踪事件【40】

【鬼2】
 
「ああ、なるほど」
 祖父氏の提案で一旦屋外へ出、裏手の車庫に向かう。昨今増えてきたエンジンと電動機ハイブリッド駆動の国産高級車が文字通り鎮座。
 祖父氏が艶やかなピアノブラックのドアをカチャリと開き、ハンドル脇のスタートボタンを押して、電源を入れる。
「ご自由に」
 車内の電装品が様々にランプを点灯させて動き出し、男達が乗り込んで操作する。
「これ純正……ちゃうな。みたいにインスコしてあるけど、あ、スゲー」
 マスターは目の玉が飛び出るような金額を口にした。そういう価格のナビゲーション一体型車載シアターセットだそうだ。ちなみに〝インスコ〟はインストール……導入のネットスラングである。
「ああバレてしまいましたか。流石ですね。八王子の店に頼んで入れたんですよ。防犯上それと判らず仕込んだ方が安心だと言われましてね」
 ナビゲーションシステムの起動を待って地名検索を掛ける。〝そこに何があるのか〟は地図が便利だが、〝何がどこにあるのか〟は圧倒的にナビが便利だ。
 〝鬼骨山〟……それは確かに嶺岡山地の中にあった。
 ただ、地図の縮尺をどういじっても、そこへ行き着く道が表示されない。
「クルマで行けそうも無い感じですが」
 祖父殿が困った表情。
「バイクなら何とかなりますし、それに理絵ちゃんの見立てが正しければ、むしろ奴もバイクで行ったんじゃないかと」
 マスターはつぶやき、縮尺を幾度か変え、都度ナビゲーション画面を携帯電話のカメラで撮影し、画像を内蔵メモリに保存した。
 屋内へ持ち帰り、携帯電話エリアマップと照合する。
 〝圏外〟であり、半島を横切る道からかなり離れている。最も、こちらは衛星写真を元にしているので、地形は判る。細い川の源流であり、水源であろう、池とおぼしき水面が写っている。
「湖沼があるのは地下で吸水して尚余った水分が溜まっているわけですよ。確かに地滑り地帯かも知れません」
 祖父殿が言った。
「行くか理絵ちゃん」
「はい」
 彼らは外房側からのアプローチになる。距離にして30キロほど。
 
(つづく)

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