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桜井優子失踪事件【49】

【山6】
 
 更に、磁力は〝目に見えぬ力〟そのものである。
 それは古代の人々にとって〝神の力〟の顕現に違いない。
 だから、その磁石を大きなサイズに加工する能力は、神に捧げ、神のために使うのが相応しい。……それは理に適っている、理絵子の確信。
 そして、流れに沿って歩くこと20メートルほど。明確な指向性を失い、歩くリズムでフラフラする程だった磁針が、再びピタリと引き寄せられた。
 示す枯れ野の上には何もないが。
 少し動かし、土の中を指していると判じたので小枝を拾って少し掘ってみる。特段変化は……
 違う。
 掘った穴から節足動物が沸き上がるように大量に這い出す。ダンゴムシ、ムカデ、クモ……一般に女子中学生ならキャーキャー言って逃げ出す類の不快害虫。
 そして、多く、彼らは邪念の化身とされるが。
 理絵子は落ち着いていた。最も、一度それこそ桜井優子と深夜探検していて、この手の虫に顔にたかられたことがあり、その時に比べれば大したことない、という認識が先に立ったせいもあるが。
「おお理絵ちゃん平気なんか……それ、そこが暖かいからいるんだよ」
 佐原龍太郎が理絵子に気付いて言った。
「え?」
 足もとに蠢く多数の虫を従え、振り返り首を傾げる髪の長い娘。
「暖かいせいで、普段なら食うか食われるかの関係が、仲良く冬眠ってわけさ」
 サバイバルのテクニックに、寒い夜は腐葉土に潜れというのがあるとか。それこそ菌類の活動で熱を持ち、雑魚寝より暖かいという。それはゴミの山から煙が出るのとメカニズム的には同一。
 しからば、磁石が反応し、なおかつ熱を出しているということは、その鉄を産生する細菌が今まさにここで繁殖していると第一推定。
 つまり鉄にして磁石、その磁鉄鉱がこの下にある。
「その子たちは体のいい警備員かもね」
 登与が言った。キモチワルイから触りたくない、と彼女は考えている。そして、だから、触られたくない物を隠しているのではないか、と。
 ただ、無理して手を差し入れる勇気は彼女にはない。
 本当の宝物を故意にグロテスクに作る。理絵子が知るのは、例えばオーパーツで知られるクリスタルの髑髏。
 但し、日本の神代にそのような発想があったという話は聞かない。
 ……いや。
 
(つづく)

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