【妖精エウリーの小さなお話】闇を齎す光【3】
(承前)
しかし、そこまでの僅かな時間で、幾らか情報が漏れ伝わってしまったことを認識します。すなわち、私が動物や昆虫の相談相手として存在している女性形の人間型生命体であること。ただ、翅が生えてることを除いて。
一方、同時に〝彼〟の情報も私は取得します。
その能力の故に、疎外されて。
人間の、友達はなくて。
〈おい、お前もココロで話せるんだろ?〉
〝彼〟が事件と関わりを持っている。呼びかけてきた彼の真意、いえ底意。隠したつもりのようですが、私が気付く方が一瞬早かった。
〈ちっ!〉
私が気付いたと察知したようです。それは難しい選択が発生したことを意味します。私の素性については明かすことは出来ません。明かしたところで他の人間さん達が信じはしないでしょうが、私を通じて知られては困ることが多すぎる。例えば、人が努力を惜しまないのは、生きていることに幸せを見出すから。私のような生死の枠を越えた形而上の存在が見えるのは、その努力に水を差すことになります。さりとて、事態の解決には彼との接触が不可欠。
まるで心に土足で踏み込むように、力任せに頭の中へ手を突っ込むように、〝彼〟が無遠慮に探りに来ます。それは喩えるなら……テレパシーを阻止するバリアをガラス玉とするなら、中にいる私を触ろうとして、ガラス玉を割ろうとしたり、蹴ったり叩いたり、ベタベタ触って曇らせたり。
その一連の動きを通じて、見えるのに触れない、切歯扼腕の感情を強く感じます。それは能力に対する〝彼〟のモラルの低さ、使い方の稚拙さを私に伝えます。子供が力任せに幼児を屈服させようとするのと似ていると書けばいいでしょうか。まぁ、テレパシーの使い方をレクチャーできるような人間さん自体、殆どいないのですが。
逆に言えば、テクニックに一日の長的差違はありそうです。
私は身体を人間サイズに伸ばして(形而上性を隠して)、その場に立つと、カラスの怨霊を偽装しました。つまり、ウソ情報を意図的に送り込んでそう思わせるわけです。一種の催眠術。
程なくドアが開け閉めされる音と、走ってくる靴音。
〝彼〟の認識は〝憑依〟です。つまり、人間の女性にカラスの怨霊が取り憑いて喋らせている。
攻撃?
「おい!」
踊り場から彼が身を乗り出し、肉声で私を呼んだのと。
反射的に私が彼の方を見上げたのと。
彼の隠した意図を私が見抜いたのと。
(つづく)
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