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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-32-

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 歩く。今度は床がギシギシ鳴った。
 行く手、本宅のふすまが開く。顔を出したのは真由。
 厳しい目線だったが、レムリアと判るや一転、笑顔になる。
「お前か」
 真由の背後から老師も顔を出した。
 一緒にいたということだろう。何か真由が相談でも持ちかけたか。
「お前、すごいんだってな」
 真由はいきなり言った。
「え?」
「いきなり見抜いたって。お前の言動によっては親父が変わるんじゃないかと」
「いや申し訳ない勝手に話して」
 老師は笑みを見せた。
「まぁ、こっちへおいでくださらんか。是非あなたに見てもらいたいものがある」
 招かれてその部屋に入ると和室。
 床の間に壷。傾(かし)いでおり、入れ口の部分がむくれた唇のようにめくれている。
 ハッとする感情が芽生え、思わず目を見開く。驚愕や強い痛覚のそれに似て、熱いものが身体を上から下へと走る。
 その表面はつや消しの金……銀に見えることもある。但し金属的ではなく渋い色合いであり、若干アバタを見せる。輝いていない月面とでも表すればよいか。どっしりした形態は古いが重厚であり、さながら土が自ら壷の体をなしたとでも言おうか、素朴だが存在感たっぷり。
 それは芸術性を念頭に置いたというより
「この土の荒くれぶりを壷という形となすならばこれがふさわしいのではないか」
 思うまま口にする。それは壷から得たレムリアの印象。無意識にサイコメトリを使ったのかも知れない。
「古いですね」
「ああ、存分にな。どうかね真由ちゃん」
 その台詞で、レムリアは、老師が自分の鑑定眼のことを“すごい”と言っているのだと判じた。
 少し恥ずかしい。なぜならそれは経験と知識に基づくものではなく、半分は超能力。
「お前マジすごいな」
 レムリアは苦笑するだけ。
 
(つづく)

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