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桜井優子失踪事件【66】

【地5】
 
「死ねやぁ!」
 叫びに再び杖で応じる。再度弾丸は跳ね、Kの近傍足下に着弾し、火花と煙を発し土中へめり込んだ。
 Kの表情に軽い怯み。
「ぐ、偶然も2度までだぜ」
 Kは一瞬だが丸い目で理絵子を見て嘯き、すぐに獰猛な目に戻り、腰を低くし、両手で拳銃を引き据えて露骨に理絵子に狙いを定めた。
 その距離で撃ち漏らす者はどんな素人であっても無いであろうと思われた。照準を定める必要もない。ただ、銃口を向ければよいのだ。
 しかし。
「おやんなさい。偶然と疑うなら、疑いが晴れるまで」
 それはどこぞの魔法少女の物語でヒロインが使ったセリフの変形。
 ふざけているわけではない。おのずと表情に不逞が浮かんで挑発になるから。
「なんだと?」
「だから能書きいいから撃てっつってんだろうが腰抜けが!」
 学級委員で模範的な優等生……である理絵子の啖呵は、一同が驚くのみならず、拡散していた桜井優子の意識を一瞬で合焦させた。
 ついでに理絵子はKの住所と、その後入学した医学校の学籍番号に……その際裏口入学で払った金額まで喋ってやった。
「死ねやぁ!」
 果たしてKは挑発に対し脊髄反射し、引き金を引いた。
 パン……炸薬の音。
 鋭い金属音と、跳弾の発した青い火花。
 刹那を置いて、金属が金属をえぐる鈍い音。
 金属塊が肉体に衝突する冷たい音。
 一同が銃声と共にまばたきし、再度目を開いた時、彼らが見たのはまさにもんどり打って後転しようとするK、中空へ弾かれた拳銃、あらぬ方向を向いたKの親指と血しぶきであった。
 烏合の衆が二手に分かれる。Kに駆け寄る者、舞い飛んだ拳銃を取りに行く者。
「銃って銃身が詰まった状態で撃つと破裂するんだってね。犬神明(いぬがみあきら)の小説で読んだよ」
 指摘したら、銃を取ったそいつは銃口を覗き込んで目を丸くした。
 理絵子は銃弾を錫杖で弾き、元の銃口に撃ち込んだのである。
 衝撃で拳銃は弾き飛ばされ、Kの親指の付け根を割き、鼻を折った。
 
(つづく)

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