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桜井優子失踪事件【77】

【終4】
 
 桜井優子は言い、その場の各人ひとりひとりに、丁寧に頭を下げた。
「結構。それから、あなたのことは、この方達に全部お話ししました。異論は?」
 生い立ちのことだろう。実際は祖母殿だが、〝方便〟というヤツだ。
 チラっとこちらを見る優子に理絵子は頷き、セーラーの胸元にあしらわれた校章部分を指さした。違う理由を知ってるよ。
「ないよ」
 母の問いかけに、桜井優子は笑って言った。
 シニカルなニュアンスを含まない彼女の笑顔。
 15歳の少女の笑顔。
「ウソは、もういいよ」
「そうね」
 母も笑顔で応じる。
 後始末である。まず、桜井優子をパトカーで病院へ送り出す。ちなみに鬼骨山を目指した理由だが、Kは他人に見られず(誰も来ない場所だから)悪事を働ける場所として〝禁足地〟を幾つか知っており、伴って桜井優子も鬼骨山を知っていた。鬼の骨という名から目星と定め、行き方を訊きに行ったら連れて行ってやるということになり、というわけだ。
 なお、訊きに行った理由はKが岩村正樹のチーム〝たこぶえ〟や理絵子に対して私怨を募らせていると耳にし、自分の存在が原因との思いから、仲立ちのガス抜きを買って出ようとしたのだという。……一人で何でも、である。
「正直、遊んでもらったって事実もあるしね」
 桜井優子は小さくウィンクして、パンをかじりながらパトカーに乗った。
 続ける。次に、人数に比して携帯電話の数が多かったのは、名義飛ばしの違法電話を複数持ち歩いているから。……不法滞在の外国人が無料電話として街角で売りさばいているものだ(複数台契約させて買い取り、別人に売る。元契約者は通話料金を踏み倒す。不払いで使用不可になるまで〝無料で使える〟)。
「さて、君たちから署で詳しい事情を聞きたいんだが……パトカーだけじゃ足らんなぁ」
 地元の刑事氏が言った。バイクは証拠なので乗せられない。代わりに彼らを乗せるためワンボックス車を呼んでいるから少し待てという。毛布を羽織らせてもらい、菓子パンと缶コーヒー。
〈一つ訊いていい?〉
 高千穂登与がテレパシーで尋ねてきた。
 つまりトップシークレット事項。
〈なに?〉
〈黒野さんも、死体見て平気なんだ〉
 
(次回・最終回)

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