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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-210-

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 そこでようやく、ナイフの娘は、レムリアがレムリアであると気付いたようだ。
 続ける言葉に慎重になる。刺激すれば反射が返る。来るか、自死か、はたまた手近な生徒に犠牲を強いるか。
 その時。
「夢子(ゆめこ)、さん、でしたかしら」
 山路シスターが、道行く知り合いを見付けた時のように、言った。
 当然、何故知って?旨の目が、見開かれた驚愕の瞳が、夢子から山路シスターに向けられる。
「素敵なお名前ね。彼女から聞いたわ」
 レムリアに手のひらを向ける。と、蝶の翅のように広がる装束。その動きに吊られるように、夢子が目を向けたその一瞬
「でも、それは似合わないと思うわ」
 山路シスターは言いながら立ち上がる。急ぎ過ぎず、ゆっくり過ぎず、笑顔を持って、ワンアクションで。
 対し夢子は一歩下がる。その動きに合わせ、磁石が反発するように、周囲の生徒の輪も少し下がる。
 山路シスターはステージ演壇最前に立ち、腰を下ろし、手を差し延べる。
「こちらへいらして。あなたの声を聞かせて」
 刹那。
「うるせえーっ!」
 夢子という名のその少女は、突如、そう叫んだ。
 声を限りに、開けられるだけ口を開け、喉割れんばかりの大音声で。
 若干前屈みになり、全身を震わせ。
 その唐突ぶりに、さすがに周りは驚愕したか、距離取る輪が少し大きくなった。
 でも、やはりパニックには至らない。
 夢子の口角から血がにじみ、赤い糸を描いて頤へ向かう。唇が乾燥しており、大きく口を開いた拍子に切れたのであろう。
「あらあら血が……プリンセス」
「はい」
 山路シスターはレムリアの素性を知っているので自ずとこういう呼び方になる。しかし気にしていられない。レムリアは座ったまま、OLスーツ上着の前ボタンを外し、ウェストポーチをゴソゴソして、消毒セットを取り出した。
 
(つづく)

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