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グッバイ・レッド・ブリック・ロード-212-

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「ミサンガ切れなくて良かったよ」
 レムリアは呟くと、そのまま夢子の手首をねじってナイフをもぎとり、全て失ったその顔に平手打ちを食らわす。
 手加減しない。女手なりに力を込め、目一杯ひっぱたく。パン、パン、パン……往復ビンタの3発は破裂音のように体育館に響き、夢子は床の上に倒れた。
 文字通り張り倒したのである。横座り状態で、うつむいたその顔から、鼻血がぼたぼた垂れている。
「勝手わがままも大概にしろこの大馬鹿者!」
 本気で殴り、怒鳴り声を叩きつける。びくりと動くうつむいた背中。その背を支える腕の震え。
 が、そこまで。
 傍らに膝を突き、脱脂綿を出血した鼻腔に詰める。ウェットティッシュで一通り顔を拭ってやり、囁く。
「夢子ちゃんが悪いんじゃない」
 それは叱られ、意気消沈した子どもへの語りかけそのもの。
「そうなっちゃった、だけ。でもね、あなたのしたことは卑怯なことで、許されることじゃない。あなたは私の友達を集団でいじめた。信じた私を斬りつけに来た。私は私の怒りをあなたにぶつける理由がある」
 夢子は何も反応しない。されるがまま。
「頭ガンガンする?耳鳴りする?」
 尋ねると夢子はゆっくり首を左右に振る。……声は届いている。
「終わりにしようよ、こんなこと」
 無反応。
「傷つけるよりも信じる方が、お金よりも心配をもらえる方が、楽しいし嬉しいと私は思うけど?」
「今さら……」
 投げ捨てるように、夢子は言った。
 まるで老いさらばえ死を待つのみ、そんなしわがれた声で彼女は呟いた。
 その声の錆、引きずるような痛さ。
「悲しいこと言わないでよ。13とか14でさ。誰かそう言った?誰かそう決めた?」
 すっ。と、夢子の背中に置かれた手があった。
 山路シスター。
 
(つづく)

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