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【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-1-

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 好きかと言われると、首をかしげてしまうのが正直なところであろう。
 東京・秋葉原。
 嫌い……ではない。香港にも通ずる、アジア的ゴッタ煮風とでも言うか、ぐつぐつと溢れ出てくるようなエネルギー感は、歩いていると元気をもらえる気がする。ただ、色彩的には派手だし、何より“有象無象が散乱している”という印象はいかんともしがたい。統一感のなさ、洗練されていない街の作りは、そういうのが備わった街の住人としては、たまに来るならいいけれど、住めと言われると……なのだ。
「お嬢ちゃん、終わったよ」
 トーンの低い男の声。くわえタバコで喋っているので発音が不明瞭。
「はい」
 短めの髪を翻し、店の男の方を向いた彼女は、一見してこの秋葉原向きというか、顔立ちがころんとしていることもあって、少女マンガから飛び出してきたようだ。その黒々と澄んだ瞳は、薄暗い店舗内では自ら光を放っているようであり、思わず見つめてしまう吸引力を有する。髪の毛は肩に触れない程度でスパッとカット。背は小柄。化粧っ気は全くなく、服装もブラウンのセーターにジーンズで洒落っ気はない。
 総じて優等生的スタンダードそのものであるが、メイド喫茶のビラ配りや、アニメやマンガのコスプレ少女が闊歩するこの地では、逆にシンプルさで目立って見える存在かも知れない。
「珍しいね、こんなの持ち歩いて。もっと安くて、もっと小さくて、軽いのあるのに。メールも映像も送れるよ」
 白髪頭にくわえタバコの店主氏は、軍が使う無線機のような、ごつい機器を彼女に手渡した。
 衛星携帯電話である。そして、雑誌モデルがニコニコ持ってる最新型携帯電話の広告を彼女に示し、店頭のモデルを一つ二つ手にとって画面を見せる。
「いいですこれで。都合で世界のあちこちに行くので……それで、修理代はおいくら?」
「そうかい。はい明細」
 店主氏はマーケティングを断念すると、修理明細書を彼女に示した。“買う気がない”なら、しつこく心変わりを試みるより新しい客を待つ。
 客は幾らでもいるからだ。
「ありがとうございました」
「はいよ。またな」
 
(つづく)

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