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【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-2-

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 支払いを終え、電話と財布をウェストポーチに収め、彼女は歩き出す。
 ここは総武線の高架下。個人店が多数入った雑居ビルになっており、電車が通る度音が響いて小刻みに揺れる。通路の幅はすれ違うのがやっとという程度で、ただ歩くだけでも大変。そんな通路の両側に間口1間の小さな店がひしめいているのが、ここの象徴的光景である。店先には電子回路部品、工具、携帯電子機器、果ては盗聴器や防衛関連機器までもが、雑然と隙間無く並べられている。それをスーツの男が、或いはリュックを背負った学生が、稀には顔を見られて困るのか、うつむいたサングラスの男が、品定めをしているといった案配だ。
 そんな男達の背後や、時にはリュックの下を腰を屈めて通って通路を抜け、のれん状にたわわに吊された電気ケーブルをくぐり、大きな通りへ出る。通りを跨ぐ橋梁線路を、轟音と共にステンレス製の電車が走る。
 電話の修理以外特段用事はないので、次になすべきはこの電車に乗ること。でもそう急ぐものでもない。小春日和だし、たまの東京。遅くならなければ少し歩いて無駄遣いもいいだろう。
 CDでも探して行こうか……彼女が電飾看板も派手派手しい量販店群を見回し始めたその時、電気の街にはおよそ場違いな人間が、目の前を通りかかった。
 女の子。7歳かそこいらであろう。赤いミニスカートに白いタイツ姿。犬のリード(引き紐)と思われる赤いロープをくるくる巻いて持ち、困った表情。
「どうしたの?」
 彼女は思わず、前屈みになって声を掛けた。
 女の子は彼女に目をやり、一瞬警戒の表情を示したが、相手も子どもの範疇と断じたか、すぐに頼るような目に変わった。
「ハリーがいなくなっちゃったの」
 リードを見せる。そのリードは一端がちぎれているようだ。結果、犬が逃げ出したのだと彼女は解した。
「一緒に探してあげようか」
 彼女は切れたリードを手にしながら言った。犬はオスのミックスで白くて毛が長い。シェットランドを真っ白くしたようなイメージか。女の子に対し自分がリーダーという認識で、いつも女の子をぐいぐい引っ張るように歩いていたらしい。
 そしてここ秋葉原には、必ず立ち寄る大好きな場所がある。
「いいの?」
 女の子が小さく笑顔を見せるまでのわずか数秒の間に、彼女はそれだけの情報を切れたリードから得た。
 
(つづく)

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