【魔法少女レムリア短編集】東京魔法少女-6-
←前へ・次へ→
“魔法”と言われて、レムリアはちょっとドキッとしてから笑顔で言った。
真美子ちゃんの指摘は実は正しい。レムリアはそう呼ばれる特殊能力の持ち主である。嘘をつくのはイヤなので否定はしない。ただ、真面目にその言葉を口にしても取り合ってもらえないので、自ら口外する気もない。
ちなみに、彼女の能力はまだ半人前で、魔法もののアニメのように動物と会話することは無理である。ただ、意志は伝わるし、意図は判る。
「ハリーが真美子ちゃんをおうちまでエスコートするそうです」
自分の仕事は終わり。レムリアは思い、そう言った。
しかし。
立ち上がろうとするレムリアをハリーがじっと見つめる。
「行っちゃうのかい?」
と、主人氏。
「え~お姉ちゃん行っちゃうの?」
と、真美子ちゃん。雲行きの怪しい表情でレムリアを見上げる。
それでレムリアは知った。真美子ちゃんは自分になついてしまった。
“区切りがつくまでそばにいる”……そんな気がした理由はそういうことか。
「やだ~。お礼もしてないのにぃ。まみのうちに来てよ~」
真美子ちゃんは行かすまいとするかの如く、レムリアの手を両手でしっかりつかんだ。
そこで店の主人氏が店内に戻り、女将さんがレムリアに歩み寄る。
「あんた、いきなりで悪いんだけどさ。この子、家まで送っていってやってくれないかね。ほら、最近いろいろあるでしょ?。ここ……変なの多いしさ」
女将さんは顎と目線でレムリアの左上方を指し示した。
ビルの屋上に設置された大きな看板。媚びた女の子のイラストが描かれている。いわゆる“美少女ゲーム”の広告である。
レムリアはその意図を解した。確かに、この街にはそういう方面にばかり意識が向いている人間、本能的に接近したくない、見られたくもないというタイプがチラホラいる。
幾ら、“知らない人に云々……”と言ってもだ。さっき飛び出したのと同じである。現に真美子ちゃんは見ず知らずの自分とここにいる。
「ハリーが吠えなかったんだ。あんたを見込んでさ。お願いできないかね」
女将さんのまなざしにレムリアは頷いて返した。なすべき行動は一つしかあるまい。
そこへ主人氏が戻ってくる。白い買い物ビニールと、スープの材料であろう豚の骨。まず、豚の骨を真美子ちゃんに渡し、ハリーにあげるよう一言。
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-01-(2021.01.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -20・終-(2021.01.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
- 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -19-(2020.12.26)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02-(2020.12.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -01-(2020.12.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -36・終-(2020.07.08)
コメント