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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-003-

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 それは月夜に前触れ無く出現した竜巻という表現が似合った。突如風が吹き、軒並み草むらのあらゆる植物を吹き倒し、土埃を巻き上げ、そして彼をも突き飛ばす。
 彼は数度立ち上がろうとし、適わず、ついに立ち上がるのを断念し、亀のように身を屈め、頭を両腕で覆って暴風をやり過ごそうとした。
 着ていたはんてんが風を孕んで、彼の身体を持ち上げようとする。
 ふわり。
「あーっ!」
 彼は叫び、しかし、その声は風にかき消され、殆ど音波にならない。
 すると、風が吹き始めた時と同様、突如止んだ。
 ストップモーションという表現が似合った。
 しかし、時間が止まったわけではなかった。吹き倒された草たちはサラサラと起き上がり、浮きかけた彼は音を立てて地に落ちた。
「痛え……」
 彼は呟き、しかし、そこで何かに気付いたように唐突に立ち上がって、バネ弾けるように振り返った。
 異様な光景であった。
 草むらの中に船がある。
 月明かりにシルエットを見せるその姿は確かに船である。草の海に船が〝入港〟し、鎮座している。3本のマストを有する帆船であって、コロンブスが大西洋横断を目指したサンタ・マリア……中世大航海時代の威風堂々。但しその白銀の帆は布地ではなく、どちらかというと工業製品の趣を漂わせる四角形のパネルである。
 その姿、その帆……彼は船から目が離せない。
「ウソだろ……だって、まさか」
 彼がそう呟くには理由があった。
 だから、彼は船を見続けた。磁石に捉えられた砂鉄のように見続けた。
 次のアクションを予想できるからであった。
 程なく、帆船の船腹部分に変化が生じる。四角く切り取られたように筋が入り、その部分が一段引っ込んでスライドを開始する。喫水線より下の部分に、横に長いスリットが入り、その部位から舌が伸びるように板が出、草むらへ降りてスロープを構成する。スロープの両脇にはポールが何本か立ち上がって、ご丁寧にも手すりが付いた。
 
(つづく)

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