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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-006-

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「でも、だからってあなたに、能力を使って無理に事態を認識させたいとは考えません。信じられない、としても、それがむしろ正常なのでしょう」
 レムリアは言い、悲しげなトーンのその先の、言葉にならない部分を隠すかのように、背後の船を振り返る。
「アルゴ号、って言ったな」
 相原はレムリアの背中に言った。
「ええ」
 レムリアは頷く。それは相原も船を見ており、船を知っていることを意味した。アルゴ(argo)……ギリシャ神話に出てくる当代最速の船の名。名だたる勇士達を乗せて、黒海の奥に金色羊の毛皮を目指した。
 相原は船体に沿い、指先で触れながら前後に歩く。
「このスロープから中に入ると、右手に操舵室、更に機関室。左手には君の個室があって、下層船倉には生命……」
「保持ユニット」
 相原の言葉が詰まったところを、レムリアは補足する。
 相原は戻って来、レムリアを見下ろし、もう一度手を取った。
「本物、なんだな」
「少なくとも私はそのつもり」
 小さく笑む相原に、レムリアも微笑で応じる。
「えらくみっともないとこ目撃されたわけだオレは。天使の魔女さん」
 相原は言い、照れくさそうに苦笑した。〝天使〟と付けたのは、当事者同士の秘密に属する。勿論レムリアもそれに気づいた。
 だから、レムリアは目を伏せる。
「いいえ、あなたが最も傷付いた時に、私はあなたに面倒をお願いした。だから……」
「言わなくても君の言いたいことは判る。その傷と、君と出会った記憶が結びついてセットになってしまった。傷を抑圧しようとする心理の働きで、君の存在すらも現実かどうかあやふやになった」
「心理学を……?」
 レムリアは一旦見上げた。
「いや。ただ、君の心の動きは知ってたからね。知識もろともね。借りた情報による分析」
「そうですか」
 
(つづく)

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