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【理絵子の小話】出会った頃の話-12-

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「差し出がましいことをしました」
 理絵子は振り返り、頭を下げた。
「いいえとんでもない。それよりガラスでケガはしてませんか?」
「大丈夫です。ああ、片付けないとなりませんね。箒とちり取りがあればお借りしたいのですが」
 言ったら、桜井優子の腕が回ってきて抱きしめられた。
 大柄な彼女の胸元に顔が埋もれる。
「どうして、初めての自分にどうしてそこまで……」
 怖がってるように見えたから。言おうとしたが、締め付けられて声が出せない。
 言わせないため?
 照れるから?
「遊んであげてよ、仲間に入れてあげてよ、そう言われたからそう言っただけ、ってなら幾らでもいた。でも、そういう奴ってすぐ消えた。自分も悪いんだけどさ」
 ようやく顔の向きを変え、胸の谷間から顔を出して桜井優子を見上げる。
「悪くないよ。親しげに見えて距離がある。そんなの信用したくなくて当然」
「お前がいるなら行くよ学校」
 桜井優子は、眼下に理絵子を見て、言った。
 それは口から出任せとか、そうでも言わないと自分がどこまでやるか計り知れないから……といった類に基づく発言ではない。理絵子は確信した。
 その決意ありがたい。ただ。
「彼は……大丈夫?」
 仲間はいるし、恥をかかされたという怨嗟は必ず抱える。仕返しがあって当然。
「ああ、ボディガード頼める人がいるから。今まで迷惑かけたくないからと思ってたけど、お前以上に迷惑かけるとは思わないし」
 桜井優子は小さく笑みを作って。
「その人に友達出来たら紹介しろって言われてんだ。なぁ付き合ってくんねーか?その人の所」
 言って、理絵子から身を離した。
「今から?」
 すると母殿。
「ウチじゃ余りお構いも出来ませんし……あ、塾か何か行ってらっしゃる?」
「いいえ」
 実際は行っているが夜なので問題は無い。
「じゃぁ」
 一旦屋内へ戻ると、桜井優子は玄関に回るようにと理絵子を促した。
「自分、携帯電話取ってくるから」
 廊下を走る彼女を見送り、客間に置いた学生カバンを手にして玄関へ向かう。その途中、彼女の部屋はあったわけだが。
 来るときは気付かなかった。彼女の部屋は、入り口には、襖にあるまじきテンキー方式のロックが付いているではないか。
 
(つづく)

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