アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-076-
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無数の魚が回遊している、巨大な水槽を擁する水族館が存在するが。
眼下の光景は、それをキロメートルのオーダで展開したものと言って良かった。自然の造作に手を加えたものであろう、氷で覆われた巨大空間に青い水が揺らぎ、背びれと巨影が見え隠れしている。彼女らの動きは反時計回り一様である。
中央に監視設備があり、船のセンサに言わすと、そこに人がいるらしい。空港の管制塔を天地逆にして、氷の天井からぶら下げたスタイル。
「ストップ」
「停船」
レムリアは気付いて声を出し、応じてシュレーターが船を止める。
「気付かれました」
「透過シールドは有効だが?」
「いえ、クジラ達です。私たちの気配を感じ取ったようです」
早い話、彼女達はテレパシーで〝知性の気配〟として、自分たちの存在を感じ取ったということだ。
「センサー類感あるか」
相原が言いながら船長席コンソールを操作する。そして、レムリアが応じるより早く、
「……ないようだ」
自問自答。すなわち、クジラ達が攻撃に転じる気配は無い。
だったらば。
「待って下さい……術を使います……」
レムリアは目を閉じて水中のやりとりに介入した。彼女達が〝一頭いない〟ことをしきりに気にしていることに気付いたからだ。
すると、即座に自分の介入を察知される。意図して気付かせたのだが。
〈どうしてあなたはそのことを知っている、異邦の娘よ〉
言語に置き換えるとそんな風か。
〈死んだのか、〝D〟は死んだのか〉
それは識別記号。名前代わりのアルファベット。
〈ええ。同じ危機があなた方にも迫っている。だから、私は、あなたたちを救うために、仲間とここへ来た〉
レムリアは言ってみた。バレないように、が相原の指示であるが、彼女達と接して逆に真実を明らかにし、意図を開示した方が良いように感じたのだ。
(つづく)
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