【理絵子の小話】出会った頃の話-16-
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きっかけは親同士の交流。その時点では優等生。
家庭教師もするなど優しくて面倒見も良かったという。
しかし受験に失敗して荒れ出した。そこで桜井優子がマスターに話を持ちかけ、彼はマスターの元で思う存分〝暴れた〟。
そして、程なく、桜井優子を誘った。
挙げ句、暴力で束縛する存在に成り果てた。
成り果てるまでの紆余曲折は知らぬ。マスターも理絵子も細かいことは言わなくていいと言ったからだ。優しかったはずがDVの常習になったというパターンは枚挙に暇が無い。似た経過と容易に想像が付く。
「自分、疑わないっすか」
桜井優子の側に非があると二人とも言わなかった。基づく質問。
「男が女に手を出した時点で罪/ワルだから」
マスターと理絵子は声を揃えた。文末は違ったが。
「自分、ワルっすよ。不良っすよ」
「本当のワルは自責を口にしないよ」
マスターは言うと、カウンターに戻ってコーヒー豆を挽き始めた。
「ワル甘やかしちゃだめですよ」
桜井優子は下を向いて唇を噛んだ。マスターは聞こえないかの如く口笛吹いて手回しミルをガリガリ。
「それでだ。奴とのことは判ったよ。問題はだ。AとBは奴の側に与したわけだ。理絵ちゃん、あいつらの学校側の評判聞いてるかい?」
AとBは件の不良3年生である。名を伏す。
「殆ど学校に来ないで万引き喫煙ファミレス徘徊」
理絵子はさんざ聞いてる悪行の本質を要約して伝えた。勉強サボって遊ぶにしたって遊ぶオモチャかカネが要る。オモチャのバリエーションは限られるのでやがて飽きてしまい、日がな一日ブラブラすることになる。
そのまま大人になると、日がな一日生活保護の支給金をギャンブルにつぎ込む。
「今まで目をつぶってきたが限界かな」
マスターは言い、コーヒーの抽出を行いながら〝小倉抹茶名古屋盛り〟の〝製造〟に着手した。
「ウチは硬派が条件だ。従わない以上去ってもらうしか無い」
小倉抹茶名古屋盛り……小倉抹茶パフェがベース。但し8分の一にカットした抹茶ケーキが尖塔のようにそそり立つ。
その上に更に生クリームを盛る。
「すいません、自分が余計なこと」
桜井優子は言った。
サイフォンがゴボゴボ音を立てて程なく琥珀色の雫が落ちきった。
ストレートのブラックが桜井優子に供され、理絵子の前には抹茶とクリームのタワー及び、コーヒーをベースに製造されたマンドラゴラブレンド……製法は秘す。
「いいってことよ。腐った実はいつか自分で落ちるもんだ」
(つづく)
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