アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-101-
12
※注意:人体損壊に伴うグロテスクな表現が含まれる
2階か地下かと連中は言った。
その2階で彼らが見たもの。
薄暗い部屋である。正方形の床材が一面敷かれた白い床。蛍光灯が等間隔で並ぶ白い天井。窓は無く、壁面はコンクリートに白一色。要するに四角四面の白い箱。彼らはその天井に穴を開けた形。
その、部屋の中にあったもの。
紡錘形のガラスカプセルに、水中花のように原型を留め置かれた人体標本。
特徴的な皮膚の表面状態から、ホルマリン漬けとレムリアは即断した。
そんな標本がズラリと並ぶ。人の形を模した置物として、例えばロシアのマトリョーシカは有名だが、それに近い態様で、本物の人体がズラリと並ぶ。
各カプセルには小さなアルミのプレートが貼ってあり、国名、民族名、性別、年齢、菌やウィルスと思しきラテン語の学名が記されている。
植え付けて経過を観察した人体実験と見れば合点がいった。
「発狂してもいいかオレ」
ラングレヌス。
「そりゃ人体ここまで粗末にできりゃクジラの子宮に生物兵器抱かせるくらい何とも思わんな。クジラは利口な生き物です……だから人体で培った技術が転用しやすい」
相原が言った。人は一般に死体や損壊を受けた人体には恐怖や不快感を持つものだ。それは、死への本能的な恐怖に基づく反応と言われる。平和な国の住人の彼には尚のことだろう。しかし彼は憤りが先に来たようで、反映してか銃持つ手に力が入り、今にも振り向けんばかり。応じて、環境ウエアの目の部分、透過型ディスプレイの片隅に、照準・索敵に関する機能が動いた旨、表示が出ている(誰の銃器が実働状態にあるかそれぞれ判るようになっている)。
その表示の中で出っぱなしだった〝ガス異常〟が消えた。
船からピン。炭酸ガスの濃度上昇が停止。
(つづく)
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