アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第2部-116-
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跳弾の音があり振り向くと、吹き飛ばされ消失した建物の周囲から、傭兵達が発砲しながら接近してくる。幾らかウェアに着弾すなわち命中する。もちろん防弾なのでケガはしないが、痛いことは痛い(急圧縮されると硬化する素材を使用)。
そこへ船が降下する。離着陸の爆風を持って傭兵達を吹き飛ばし転倒させ、研究フロアをフタするように船体を降ろす。
おびえる人々にレムリアは呪文を唱える「(月よ我が身に我が思う映し身を)」。
「ガラスを割りたい」
人々には、そう訴える天使の姿が見えたはずである。
『振動を加える。伏せさせろ』
〈ガラスを割ります。身を伏せて。ベッドの下へ〉
ガラスが一瞬にして白く曇ったようになり、中が見えなくなる。船の発した超音波の振動で粉々になったのである。ただ表面にフィルムが貼ってあるのか飛び散ることはない。
再び銃弾が飛び交う。今度はその海の方からである。小型舟艇が幾つか、ライト輝かせて接近するのが見える。傭兵達が攻撃用高速小型船を駆り、そちらからも入ってきたのである。
アリスタルコスが船に向かい走るが、間に合うか。架台は甲板中央にあり、そこから舟艇群を狙うのは船体が邪魔で不可能である。架台から外して降りねばならぬ。
その時、各人のイヤホンに再びピン2連発。
『何か巨大な擾乱が接近……クジラだ』
シュレーターが、言った。
黒い怒濤のように海の中から巨体が現れ、そのまま、研究所側のコンクリートの護岸へ乗り上げ、下半身を左右に振り回す。生じた波と図体の力によって舟艇群はあっさりと転覆し、ライトも銃弾もそれきり途絶えた。
波が研究所に流れ込み、各人の足もとを洗う。ガラスの室はフィルムが剥がれたか、磯の砂城よろしく粉々にくずおれた。
(つづく)
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