アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-036-
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この、彩なす光たちを、数百万度の炎の毒花が引き裂こうというのか。
乱雑なキノコ型が乱れ咲き、無秩序にしようとしているのか。
そうとはとても思われない。レムリアは首を左右に振る。今追いかけているのが核ミサイルであり、間もなくここにそれが映し出されることを信じたくない。
「寒いのか?」
相原に訊かれて「違う」と答え、歯を食いしばる。
レーダが捉え、カメラが追い、スクリーンにミサイルが映った。
大陸間弾道ミサイル。いわゆる広島型原爆の1000倍を越す破壊力を持つ、文字通り空飛ぶ地獄。
この種のミサイルは宇宙空間に飛び出すと弾頭部のみとなる。ロケットエンジンで宇宙まで送り出され、後は地球重力で目標へと落ちてゆくのだ。
船がミサイルに近づいて行く。大量死を乗せ、宇宙を漂う流線型のカプセル。
頭上には地球。
目標まで手のばせば届くほど。
「加速用意。周囲に影響を受ける衛星はないか」
アルフォンススが言った。
レムリアは自コンソールの画面を見る。ドクターが加速レバーに手をかける。
「ありません。加速可能です」
「加速、光圧シールド」
レムリアの言葉を聞き、アルフォンススが指示を出す。ドクターがレバーを押し込み、船は瞬間的に加速する。
シールドの光圧で弾頭を突き上げる。所定の地球落下軌道を大きく外れ、宇宙空間遙か彼方へと放り出される。
「弾頭速度毎秒15キロ」
レムリアは報告した。次いでセレネが軌道計算。
「地球に戻りません。このまま宇宙空間に遺棄されます」
それは成功を意味すると知る。
「こいつら基本的にはこの方法で行けそうだな」
相原が言い、レムリアは安堵には早いと言い聞かせながら頷いた。
「よし、次だ」
アルフォンススが言った。
「はい。第2目標、進路前方2千4百キロ」
(つづく)
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