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【理絵子の夜話】犬神の郷-11-

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 そして当該禊祓に関する伝承の文言(※)を諳んじる。これに組長らは驚いた。
「秘中の秘、ということでしょうか。口の数だけ門が立つわけですし。千年二千年の長き時を経て尚口外されないのはよほどのことと」
 理絵子は正座して組長らに目を向け、まばたきもせずそう尋ね、湯飲みの茶を一口。
「わでらは誓っておりまじでの」
 組長氏が言った。
 組でその秘は口述伝承のみで受け継がれて来たのだという。また、伝承は今際の際でのみ行われ、かつ、幹部3人以外の誰かが知ることは許されず、書き出すことも認めない。
「すると生け贄の巫女は確実に死ぬ、というか『死ね』」
「そりゃ、言いにくいですね」
 理絵子と本橋美砂は言った。それは女の子同士の日常会話そのものであり、およそ神代からの禁忌に触れ、まして現代において殺人と解釈される行為に言及しているとは思われない。
「死ななかったらどうなるんだろう」
「殺されたりして」
「……そうなんですか?組長さん」
「登与ちゃん似たの聞いてる?」
「ううん……まぁ、行ってみれば判るんじゃない?」
 登与が言った。
 3人の言葉に組長らは狼狽し、発言者に都度目を向けて都度目を剥いて見せた。
「あ、あの、少し(すごし)待ってもらえねえだが?」
 そして、ちょっと失礼とその場を立って玄関から外へ出た。
 密談であった。

※禊祓の儀についての文言を以下に転記す
この書の開かるるは、全てのことの終わりの時なり。
その時の来たるは、雷(いかずち)の轟きにて知らしめん。
光持つ者の遣わされたるを見る。光は星なり。絆にて結ばるる、畢星(ひつのほし)と昴星(すばるぼし)。
かくもけたたましき星の見知らぬ。
白き光の瞬きと、切り取る音と。雷の道を導かん。
巨きな(おおきな)印、小さき手にて大きく動き。
星と星との邂逅を得ん。
通じぬもの通じ、しかし封じるもの封じるを得ず。
(この部分不動明王真言)
この書開かるるまで、禊祓の儀、途切れる事無かれ。
凛として。
天正拾四年壱月
 
(つづく)

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