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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-072-

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 セレネは指揮官の顔を正面から見た。無精ひげに覆われたその顔は、汗が玉をなして覆い、皮膚が赤く染まって気ぜわしい呼吸音を絞り出している。今や彼は真実と命令の狭間で進退窮まり、選択肢に詰まった状態なのだ。自分が国家の命令通りに行動すれば、どんな運命が自分と国家を見舞うか、良く心得ているのである。しかし、国家の命に背き、彼たちを無罪放免にすることもまたできない。
 誰かが命令実行不能の状態を作り出さないと先に進まない。
「(……あなた方が真に攻撃すべきは、人間としての尊厳を捨ててでも真実を否定し蒙昧を弄するこのレイシストであり、そして、あなた方が守るべきは、失われれんとしているステーツの誇りではないですか?)」
「(だめだ)」
 ノー!と大きな声を出し、指揮官は腰の拳銃を抜いた。
「(最後の警告だ。いいか、そいつらの身柄引き渡しを要求する……さもなくばJSDFによるステーツへの宣戦布告と見なす。上院議員殿は、ホワイトハウスの代表としてレーザ迎撃システムでミサイルを撃ち落としたと言っているんだ。ホワイトハウスの言葉は即ち大統領の言葉だ。合衆国の軍人が合衆国大統領の言葉を信用するのは当たり前だろうが。判ったな?判ったら我々に従え。お前達JSDFは我々と共同歩調をとると協定にあるはずだ)」
「(小隊長!)」
 さすがに見かねたか諫言があり、更に。
「(JSDF殿。我が軍の無礼は申し訳ない。しかしながら、我が軍も正式な命令解除の指示を受けていない。その者達を引き渡し願えないだろうか)」
 レムリアは仰向けで彼らの会話を聞いていた。真剣な対峙のはずだが、全員の顎ばかりが見えるだけで不謹慎な面白みがある。ただ、衛生担当官は手を腹部に置いたままであり、相原も自分の手を握ったまま。
 
(つづく)

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