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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-074-

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 男性は相原の目線に気付くや、背中さする手を振り払うようにして布団に潜る。
 困ったような奥さんと相原の目が合う。相原は軽く会釈をした。
「今日は、暖かいですね」
 奥さんがゆっくりと話しかける。
「そうですね。風もないし」
 相原は奥さんのテンポに合わせてゆっくり答ると、廊下を歩くローヒールの音に、顔をそちらに向けた。
 よそ行き顔の看護婦が足早に目の前を横切って行く。ここは病室と廊下の間に仕切がない。その代わり、ベッド全体をカーテンでぐるりと囲う構造。下世話な言い方をすれば価格的に最もリーズナブル。
 看護婦が行き過ぎる。この部屋に用があるわけではない。相原はそれを確認すると、目線を手前に降ろした。
 彼の目の前、ベッドの上には、やはり浴衣姿で娘が仰臥している。疲れたような顔色で、しかし安心の面持ちで、安らかに寝息を立てている。
 レムリアである。助かったのだ。
 相原は足を組み、その上に肘を突き、レムリアを眺める。
 この娘をここまでまじまじと見つめたことは過去にない。そして見つめ続けて鑑賞に値し、その目を離せなくなる吸引力をこの娘は有している。
 要するに、かわいい女の子。ショートカットはいかにも快活な印象で、軽やかで颯爽としているこの娘によく似合う。
「ふう……」
 相原はため息をつく。セリフ形で記述したが、その発声は声と呼べるかどうか判らないほど、かすかだ。僅かでも気付かれる、それを恐れているようである。
 ここでレムリアが失神した後の経緯に触れておく。
 自衛隊の出したクルマの中で、相原はこの病院への搬送を指定した。彼の父親は希代の難病に罹患したが、その病気である可能性に最初に言及したのがこの病院であった。その結果から、知識情報は広いと判断したのである。彼の知る限り最も優秀な病院がここ、ということだ。
 
(つづく)

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