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【理絵子の夜話】犬神の郷-16-

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「案内してくれる」
「送り狼さん」
「かな?」
 少女らが犬の後を歩き出し、更にその後をおっかなびっくり組長らがついて行く。ただ、それは置いてけぼりの恐怖から、のようにも見える。
 不思議な行軍である。先頭は犬。少女が3名続き、戸惑い顔の男が3名。
「そっちは……」
 谷筋から法面へ入ろうとしたところで組長氏が声を上げた。
 少女達は立ち止まり振り返り、次いで登与が指をパチンと鳴らして犬も止まった。
「道じゃねぇずら」
「近えことは近えが」
 組長らの説明によれば、谷筋を上がって行き、岩肌の峠を越えて、というのが基本。
 法面を登って尾根を越えるのはショートカットになるが、道ではなく特に冬季は埋もれること必定。
「あの……」
 そこで理絵子は口を開いた。
「あんでしょう理絵子様」
「わたくし、現在のこの状況は、試されている、と感じております。つまり、信じている、かどうか」
「よくわからねが……」
「端的には犬について行け、その裏には人間の判断を挟むな」
 美砂が補足した。
「だども……」
「私たちはこの犬に送り狼を依頼することに特段不安や誤謬を感じてはおりません」
「それを、皆さんも信じられるかどうか」
 登与と、理絵子が言った。
「引き返して尋常通り人の道を行きますか?」
 美砂が尋ねた言下、
 地震が起こる。
 鋭く早い、縦方向の揺れが襲い、あちこちでミニと称すべき雪崩が起き、木がギシギシと軋み、交錯する枝同士が触れ合ってムチで叩くような音を立てる。
「なゐ(ない・地震の古称)じゃ」
「恐ろしい、お怒りじゃ」
 組長らは引き返そうとし、相次いで腰まで雪に埋もれて身動きが取れなくなった。
 揺れは程なく小さくなり、最後にゆらりと一回左右に動いて収まった。
 地鳴り。
 
(つづく)

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