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【理絵子の夜話】犬神の郷-17-

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「余震……」
「違う」
 美砂の言葉を登与が遮った。
 言下、向かい側斜面で盛大な雪煙が上がり、茶色い地肌があちこち顔を出す。
 雪崩であった。雪が流れ、積み上がって舞い散り、応じた風圧が生じて髪の毛を流す。
「理絵子様、引き返しましょうや」
 ひとりが訴えた。櫟本氏だ。埋もれた雪から這い出そうとして余計に埋もれ、動けなくなる。
「いちの、待て。雪崩たのはおらだぢが来る時通っだどごだ。もし、おらだぢがあっち通ってだら」
 組長氏が可能性を呈し、自らの周囲を踏み固めた上で、美砂に足を下ろす位置を訊く。
 美砂の指示に従い這い出す。
「んだ。理絵子様だぢには判っただよ。理絵子様の仰せに従うだよ」
 神無城氏が続く。彼らの言動は21世紀の日本に住んでいるとはとても思われなかった。しかし正直、何も言わずただ淡々と、唯々諾々付いて来てもらった方が、彼女達としては逆にありがたい。
 白犬の先導で尾根を越え、谷へ降りる。
「川の中を渡るだが?」
 ここは獣道であり、近傍に橋は無いとの説明。
「がだがだ言うなや。理絵子様はわがっでいらっしゃる」
 組長氏が言った。実のところ、理絵子自身は何か判っているわけでは無かったが、ちゃんと渡れるという確信はあった。
 然り、先ほどの雪崩で雪が流れ込み、川を塞いでいた。
「天然ダムになるかもね」
 登与が振り返ってひとこと言い、しかし今はダムになろうと知ったことでは無く、一行は雪で出来た橋を渡り、反対側の尾根へ登って行く。
 途中、壊れかけた朱塗りの小さな祠があり、犬はそこで立ち止まった。
「おお、お堂が」
 組長氏が祠の前にしゃがみ、壊れた木組みを直そうとするが、柱が折れており、修復は出来ない。
 犬はそこで座って理絵子を見、尻尾をパタパタ。
 
(つづく)

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