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【理絵子の夜話】犬神の郷-18-

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「送り狼はここまで、らしいです」
「ああ、構わねぇ。集落はもうそこだで」
 そこ……指さした先には、屋根に雪を載せた家々が幾らか。みな平屋建てであり、スレートやモルタルと言った最近の建材は見えない。入り組んだ道路は舗装こそされていないが、雪かきは施され、通行に支障はなさそうだ。
 犬は理絵子が撫でたら一声吠え、くるりと身をひねり、元来た道を去った。一方、一同は祠に頭を下げ、集落へ向かって斜面を下りて行く。
 違和感。
 立ち止まるほどでは無いが警戒すべき、と超感覚が言って寄越す。誰の姿も見えず音もしないが、無人とは明らかに違う。その正体。
「視線……」
「感じる」
 少女らは口々に言った。理絵子は多数の人が自分達を監視し、ある意味“忌んで”いると感じた。
「歓迎……」
「すべからざる、と言ったところか」
 美砂が言ったら、組長らは彼女らの前へ回り込んで、またぞろ土下座の様相。
「すまねぇ、失礼をすまねえ。めっだなごどで客人(まろうど)なんが来ねでよ」
「お気になさらず。見慣れない人間を警戒するのは防犯の基本ですから」
 理絵子が言うと、組長らはどうぞどうぞと手刀を切って先導し、彼女達は大きな日本家屋に案内された。
「遠野物語」
「柳田国男」
 美砂と登与がほぼ同時。つまり、伝承説話に出てくる古民家という印象を持ったということ。
 引き戸を開けて入ると天井は無く、黒く燻された弓なりの梁が頭上を渡り、屋根板の勾配が広がる。
 その梁から下がった裸電球。板敷きの居間には囲炉裏。
 ただ、電球は消えており、囲炉裏にも火は無く、冷え込みもあってしんと静かだ。
「火を起こすで待っでぐんねが」
 白い息と共に男達が動き、方や火を起こし、こなた壁のスイッチをひねって電球を灯し。
 その、ぼわんと広がる、優しいが弱さを含んだ赤い白色。
 
(つづく)

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