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【理絵子の夜話】犬神の郷-19-

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「この書が読めるのは犬神様が認めた者だげなんだどもが……」
 組長氏が恐る恐ると言った感じで、少女達の前に巻物を差し出す。
 草色の表装であり、えらく新しい。
 否否。
「防虫処理」
「また身も蓋もないことを」
 美砂は“ボケた”のであったが、緊張した場面で笑いを引き出すには行かなかったようだ。理絵子が苦笑して僅かにツッコみ、巻物を手にして広げる。
 真っ白。
「読む、んじゃない。感じる」
 言ったのは登与。
「第六感……いや、安直」
「そう、ピンときたのは結界だけ。これは素直に感じればいい」
「見えない。見えなくても感じさせるには?昔の手法で」
 五感。見る聞く味わう匂う触る。
「この草色は……匂いはさすがに抜けてるけど……蚊取り線香のと同じ」
「除虫菊?でもあれって欧州原産で明治になってからじゃ」
「まぁいいじゃん。後は味わう、触る。味じゃぁ意味や言葉は無理か」
 美砂が言いながら白い紙の上に触れ、あっ、と言った。
「触る、だよ。文字がレリーフ状に浮き上がる。でも……これ漢字?漢文とも仮名文とも」
「代わりましょうか」
 登与が指先を走らせる。
「万葉仮名」
「なるほど」
 彼女はその能力、高千穂と登与という神話がらみの名もあり、日本神話や古典の類が大好きである。
「要約しますね」
 冒頭、編纂、及び記述者名の羅列、藤原某、何とかの麻呂他十数名。
 編纂年、承和三年。
「昭和?つい最近……」
「いや、承知しないぞの『承』に和む。834年から848年まで。仁明(にんみょう)天皇の年号」
「ああ、それで藤原ナンタラが出てくるんだ」
 概略。蝦夷(えみし)の地、当時の関東に左遷された佐伯という男が、地元の未開民族に頼まれて化け物征伐。香取・鹿島両神宮の加護も得て、化け物を太刀と炎で西へ追い立て、この地の谷底へ封じた。
 
(つづく)

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