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2012年4月

【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-03-

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 そういう場合に周囲が出来るのは、それを否定せず、結論を急がず、全て受け入れること。
 誰に対しても、同じ光を投げかける……月になった気持ちで。
「(この本ってさ……)」
 パソコンが、スクリーンセーバーに切り替わるくらいのタイムラグを経て、彼は言葉をつないだ。
「(昔むかしの冒険の記録だよ。人間が移動するには歩くか船しか方法がなかった頃の)」
 彼女は言った。
「(だから、全部本当のことなんだよね)」
「(えっ?)」
 答えに詰まる。各エピソードが伝聞をスタートにしているのは確かだろう。だが、尾ヒレや脚色が多分に含まれており、事実とは限らない。むしろ言えない。自分が読んだのは幼い頃なので記憶が怪しいが、ドラゴンやシーサーペントが〝実在〟として出てくる。
 そもそもは過去、魔法の普及と活用に関する資料の一環として著されたもの。それは現代人には体のいいおとぎ話。
 彼女が答えの言葉を用意している間に、男の子は再びスティックを口にくわえ、ロボットにページを戻させる。
 ジージーと音を立ててロボットが動く。現れる話が変わる都度、男の子が装置の動作を止め、この話は……と短くコメントする。結果、56ページ戻るのに250秒掛かった。
「(これだ)」
 ゴール?地点のその話は、タイトルを〝夜無き国の火を噴く氷〟。
 あらすじは次の通り。みなしごの青年が自分の親を知りたいと思い、魔法使いに訊いたら、そういう氷を見つけて食えと教えてくれた。彼は冒険に旅立ち、時を経てようやく見つけてその氷を口に含むと、確かに両親が目の前に蘇り、しかし、直後彼は息絶えた。旅立ちを決意してから70年後のことだった。
 但し、具体的にどこの国かは推測できない。雪山を越え、怪物跋扈する大森林を抜けると夜無き国であり、海を渡ると氷の島があって火を噴いている、とあるだけ。
 
(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-22-

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 その先の言葉は留保する。それでナマズとやらにどうやって挑む?
 オオカミを味方に地震と戦え?
 イメージが沸かない。というか、当該オオカミに会って意図を聞かないと何も始まらないだろう。
 そして、恐らく、そのオオカミは本当のオオカミ、すなわち生き残りのニホンオオカミでは無い。オオカミ、或いは犬の姿をして恐れられている何か、だ。
 登与が続ける。
「最後になります。手なずけよ、さすれば救われる。生娘の戻らぬ場合の行く末は神のみぞ知る」
 神のみぞ……つまりは判らない。ただ、判らないのは娘の行く末なのか、娘が戻らないことが失敗を意味し、その結果集落がどうなるか知らない、という意味なのか。
 同じ疑問を登与も抱いたようである。書物に手をかざして超感覚を働かせている。何か意図が感じ取れないか、ということだ。
 比して目の前の現実、すなわち集落はこうして存在しており、自分の知る限り大きな地震が頻発したという知見は持っていない。関東及びその周辺で生じた被害地震は、関東大地震系、東京直下系、房総沖系、伊豆半島東方、富士山周辺、そんなところか。
「隠蔽はあるよ」
 美砂が言った。理絵子の認識を踏まえてのこと。
「理科年表とかの地震は、大学の集めた文献が元だけど、見つかったものしか載ってないからね。被害甚大のところ他国に攻められ……を恐れた為政者が無かったことにして都に報告も上げなった。は充分あり得るよ」
「或いは壊滅しちゃって残す人すらいなかった」
 理絵子が言ったら、組長氏が床に手を付いた。
「理絵子様、それはご勘弁を」
「これは失礼、言い過ぎました。ただ、この書物が神代からのものであるなら、そうした大きな災害は被らなかった、という意味でもありますね」
 フォローしたつもりだが、組長らの怯えは払拭できない。
 
(つづく)

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【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-02-

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「(マジックショーはいつなの?)」
 男の子は尋ねた。
「(来週だよ。今病院と打ち合わせしてきたところ)」
 彼女は言い、自身の手を握り、手を開き、それこそマジックの手法でキャラメルを取り出し。
「(どう?その本。面白い?)」
 訊きながら前かがみになり、男の子の口にキャラメルをころり。彼女はボランティアで医療活動をしている看護師であるが、年齢は14である。活動の一環として小児病院・病棟を回り、マジックショーをしている。ホスピタルクラウンと称される活動の一つ。
「(面白いって言うか、すげぇや)」
 彼は8歳の男の子なりの無邪気な笑顔でそう応じたが、すぐに、不意に消えた火のように、床面の何もないところを見つめた。
 とにかく長い長い面白い本を持ってきて……退屈しのぎであろう、男の子の求めに応じて用意したのが、古いその本である。彼女の実家に伝わる物で、技法体裁で判るように、グーテンベルク以前の産物。
「(この機械。こんなのどこで売ってるんだ?)」
 取って付けたように、男の子は彼女に笑顔で訊いた。
「日本、東京、秋葉原」
 彼女は即答した。すると男の子は驚きを小声にした上で、
「(ジャポン!マンガの国だよね!え?行ったことあるの?)」
 興奮気味に訊く。〝ジャポン〟というフレーズは、男の子に別な興味の火を新たに点けたようだ。
 ただ、頷いていいものかどうか彼女は躊躇する。恐らくは、生まれてこのかた戦乱しか知らない彼達に、平和の象徴とも言えるかの国はどう映っているのだろう。
「(友達がいてね)」
 結局、彼女の妥協点はそこ。ウソは言ってない。
「(日本の友人か。オタクか。いいなぁ)」
 彼は言い、再びフッと表情を曇らせた。
 短時間に極端に感情が変化するのは、大きな、大きな、耐え難い傷を負った心によくあること。端的には、ことあるごとにフラッシュバックするから気分がしぼむ。
 
(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-21-

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 続きを登与の指が読む。相次ぐ村人の失踪に困った時の長(おさ)が陰陽師を招聘したところ、巫女を立ててナマズに対峙せよとの託宣を得た。その巫女の条件というのが。
・陰陽道に通じていること
・背丈五尺以下の美しい生娘であること
・この集落の者では無いこと
「集落の者で無いというのは……」
「拝み倒して死んでもらうか、よそ者攫ってこい」
「しかし陰陽道に通じていれば、人さらいが来たことぐらい感知するでしょうに」
「本当に通じていればその意思汲んで死なずにナマズを倒すはず、と」
「連れて来ていきなりさぁ戦えってのも凄いねしかし」
 彼女達の会話はまるで午後の喫茶店である。楽しげですらあり、応じて組長らの顔に驚愕の色がありあり。
 登与が指を止める。
「手放しで戦えってわけでもないようです。戦い方も書いてあります一応……犬神を召喚しろ」
「おお」
「い、犬神様を……?」
 少女らと組長らは全く相反する反応を示した。すなわち少女らは興味津々であり、組長らは畏怖である。
「むしろ、そのために巫女に対する身体的条件が課せられているようです。犬神をおびき出すために“子どもの匂い”が必要なのだとか。子どもを食うために出てきた犬神を子ども自らが術で操り従わせろ」
 人が動物を意のままにする……一般にしつけや訓練の範疇であるが、
 そこに属さないパターンを先ほど少女らは自ら示し、組長らは目撃した。
 当然、その事実が物を言うことに気付いたようだ。
「おでら(俺達)も、その辺の話は聞いたことがあるだが……」
「無理だ、出来っごねぇ、って思ってた。でも」
 理絵子は頷いて見せた。
「恐らく犬神と意志を交換し、私たちの意図を理解させることは可能であろうと思われます……」
 
(つづく)

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【あとがき系】月光計画10年間

アルゴ(argo)
設計した船大工アルゴスの名から取ったとも、快速の意とも。
 
金毛羊の毛皮を求め、星空を彩る錚々たるメンバーを乗せて黒海の奥へ旅したギリシャ神話の大型帆船。
 
こいつ飛ばそうと思ったのは、雑誌「Newton」に乗ってた中世のアルゴ座の絵が浮いてるように見えたから。
「奇蹟」をネタにしたお話を何か書きたくって、奇蹟…形而上の存在と対極にある先端技術フルに詰め込もう。
それが「アルゴ・ムーンライト・プロジェクト」ちなみに、ムーンライトプロジェクトという名前自体は、20世紀後半に存在した政府の新エネルギ開発プロジェクトの名前。光子ロケットが人類の知る究極の原動機であることと引っかけた(別にサンシャインプロジェクトというのもある)。
 
1999年頃の話。
 
当初、主役は相原で、船のメンツはヤローばかりだった。2部と3部の最初と最後の部分はその名残。
でもそれだと連中には悪いが殺伐とした。ビジュアル的に華が無いし、潤いが無い。
ハイテク銃器の対極、奇蹟の担い手…魔法使い。および、ひたすら謎の美女。
レムリアとセレネ。
 
地球を駆け巡る話を書くのは楽しかった。託宣を受けたように、船は舞い、彼女は指先に月光を受け、願いは奇蹟を生んだ。
 
レムリアを主役にしたのはむしろそこからのスピンアウト。いろいろな物語が生まれ、いろいろな彼女の姿を眺め、そして一回りして原点に戻ったとき、一つの思いと一つの決意。一つ、やはり振り返って見劣りがした。書き直したい、と思った。その間の革命的な通信技術を反映したかった。一つ、なぜ、彼女がプロジェクトに加わったか、という前というか、きっかけの部分を書きたかった。
相原ではなく、彼女を主役に据え直して。
この物語は、彼女があってこそ成り立つものとハッキリしたから。
 
姫たる彼女を物語に「招待」するには?
 
P9250683 オリエント急行なら、いいだろう。
 
そして「第1部」が加わった。
 
2007年の話。
 
セレネさんに関わる幾つかの謎と、相原と出会ったきっかけと、応じた技術革新を載せて、船は駆け巡り、星空を行き、そして波を蹴立てた。
 
3部構成、830枚。足かけ10年。
これが、全ての始まり。
 
★魔法少女レムリアシリーズ…並べ方は彼女の年齢による
アルゴ・ムーンライト・プロジェクト ミラクル・プリンセス マジック・マジック 魔女と魔法と魔術と蠱と ブリリアント・ハート 夏の海、少女(但し魔法使い)と。 東京魔法少女 Good-bye Red Brick Road(グッバイ・レッド・ブリック・ロード) 豊穣なる時の彼方から 博士と助手(但し魔法使い)と。 夜無き国の火を噴く氷 リトル・アサシン ベイビー・フェイス(2013年)

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【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-01-

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 上半身が起こせる介護用ベッドに、パジャマを着た男の子が一人。
 ベッドを跨ぐ形で設置されたテーブルには、極めて分厚い本と、何やら機械が載っている。
 本は一見して古さが際立つ。表紙は何と木製、すなわち木の板であり、留め金が付いていてロックできるようになっている。本文は紙ではなく、なめした羊皮。文字は印刷ではなく、一文字一文字焼き入れで刻んである。
 機械の方はL字型のロボットアームを持っており、アームはページ端を押さえている。
 ページめくり装置である。
 装置からはUSBのケーブルが垂れ下がり、ベッドサイドの小テーブルにあるノートパソコンにつながれている。
 男の子は口にくわえたアクリル棒で、パソコンのキーを叩いた。
 ロボットアームが動いてページをめくり、アームがくるりと円を描いて回転して戻り、次のページの端を押さえる。
「(こんにちは)」
 壁をノックする軽い音があってフランス語、少女の声。
 男の子はくわえていたアクリル棒をパソコン傍らのコップに入れ、振り向いた。
「(お姉ちゃん!)」
 お姉ちゃん、と呼ばれた少女はしかし、言語から想起されるイメージと異なる黒髪の娘で、秋葉原や原宿で見かけそうな容姿雰囲気である。少女マンガのヒロインを思わせる黒く煌めく瞳。髪の毛は肩に僅かに掛かる程度で、ジーンズ姿もあって軽快な印象。
 対し、男の子は黒檀の肌の持ち主であり、パジャマの両腕を伸ばした……ただ、その腕は包帯が白く巻かれ、肘から先の部位が存在しない。足も然り。
 男の子の家は、政府軍の爆撃に遭い、彼の手足と、両親と、兄弟達と共に破壊された。
 彼女がボランティア活動で野戦病院にいた時に担ぎ込まれた。
 続く戦闘と爆撃は彼の心をむしばむと判断され、彼女の現居住地であるオランダ・アムステルダムの小児病院へ引き取ったのである。
 
(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-20-

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「香取・鹿島って千葉と茨城の?」
 美砂が尋ねた。
「そうです。当時から大神宮。文字通り倭国の東の端にあって東から来る魔界勢力から国土を守っていた」
「登与様、鹿島ちゅーのは、あの鹿島さまだが?霞ヶ浦の塚原卜伝(つかはらぼくでん)の鹿島さまだが?」
 組長氏が尋ねた。剣豪で知られる卜伝は鹿島神宮の祠官の子。
「ええ、その鹿島様です。ですから、今のくだりは承和期の出来事ではなく、ヤマト王権期の伝承に言及しているかと。ひょっとすると日本武尊の東方征伐行と絡んでいるかも知れません」
 登与が説明を追加した。香取・鹿島の設営はそうした神代まで遡る。当時関東は広大な湿地であり、その名残が霞ヶ浦、北浦である。両神宮はこれら浦が内海だった頃、存在した島の上に向かい合う形で建てられた。
「ヤマトタケル……」
 組長らの顔色が変わる。登与の説明は仮定に過ぎないが、日本神話の王道を行く名前の登場は、この信心深い者達に非常なインパクトを与えたようだ。
「続きを読んでも……」
「ああ、ああ、済まねぇ」
 時代は下り、神代の出来事は忘れ去られた。しかし、その化け物を埋めた場所すら判らなくなった頃から、大ナマズが夜な夜な地鳴りを立てて山野を徘徊、人を食うようになった。
「ナマズは魚でしょ。何で山野を?」
 理絵子は訊いた。
「群発地震の類と見たけどどうだろう。たびたび地割れや山崩れが生じて落ちたとか」
 美砂が言い、理絵子は頷いた。ナマズと地震、ああ、なるほど。
「ひょっとすると香取鹿島のご加護ってのもその辺と関わるのかも。どっちにも地震のナマズを封じたという要石があるから」
 登与の説明に理絵子と美砂は頷いた。ちなみに、この時点で彼女らは与り知らぬが、追って2011年、日本では有史以来最大となる東北地方太平洋沖地震が発生し、この際、鹿島神宮の鳥居が倒れたのは何の因果か。
 
(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-19-

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「この書が読めるのは犬神様が認めた者だげなんだどもが……」
 組長氏が恐る恐ると言った感じで、少女達の前に巻物を差し出す。
 草色の表装であり、えらく新しい。
 否否。
「防虫処理」
「また身も蓋もないことを」
 美砂は“ボケた”のであったが、緊張した場面で笑いを引き出すには行かなかったようだ。理絵子が苦笑して僅かにツッコみ、巻物を手にして広げる。
 真っ白。
「読む、んじゃない。感じる」
 言ったのは登与。
「第六感……いや、安直」
「そう、ピンときたのは結界だけ。これは素直に感じればいい」
「見えない。見えなくても感じさせるには?昔の手法で」
 五感。見る聞く味わう匂う触る。
「この草色は……匂いはさすがに抜けてるけど……蚊取り線香のと同じ」
「除虫菊?でもあれって欧州原産で明治になってからじゃ」
「まぁいいじゃん。後は味わう、触る。味じゃぁ意味や言葉は無理か」
 美砂が言いながら白い紙の上に触れ、あっ、と言った。
「触る、だよ。文字がレリーフ状に浮き上がる。でも……これ漢字?漢文とも仮名文とも」
「代わりましょうか」
 登与が指先を走らせる。
「万葉仮名」
「なるほど」
 彼女はその能力、高千穂と登与という神話がらみの名もあり、日本神話や古典の類が大好きである。
「要約しますね」
 冒頭、編纂、及び記述者名の羅列、藤原某、何とかの麻呂他十数名。
 編纂年、承和三年。
「昭和?つい最近……」
「いや、承知しないぞの『承』に和む。834年から848年まで。仁明(にんみょう)天皇の年号」
「ああ、それで藤原ナンタラが出てくるんだ」
 概略。蝦夷(えみし)の地、当時の関東に左遷された佐伯という男が、地元の未開民族に頼まれて化け物征伐。香取・鹿島両神宮の加護も得て、化け物を太刀と炎で西へ追い立て、この地の谷底へ封じた。
 
(つづく)

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今後の予定

毎週水曜更新 理絵子の夜話「犬神の郷」
4月14日スタート 毎週土曜日更新 レムリア短編「夜無き国の火を噴く氷」「リトル・アサシン」
 
こんな感じです。

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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部-092・完結-

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「手伝います。私もナースです」
 レムリアは血を拭うこともせず、ストレッチャーの下にあったAEDを見つけて中を開けた。
 看護師のPHS電話機が鳴る。
「はい、判りました。今AEDを……すぐ行きます」
 看護師が応じ、電話を戻す。
「オペ室へ行きます。じゃあ悪いけど一緒に」
「もちろん。学、お母様のほうお願い」
 レムリアは言うと、看護師らと共に、ストレッチャーを押して風のように去った。
 相原は半ば唖然とし、次に口の端に笑みを浮かべ、後ろ姿を見送った。
「あの……おじいさんは……」
 夫人が心配そうに相原を見上げる。
「大丈夫です。ちょっと出血したようです」
 相原は膝小僧をすりむいたかのように軽く言った。
「でも」
 ベッドは血の海であり、一部したたり落ちるほど。
「大丈夫、彼女……医療奉仕活動やってましてね。世界中で沢山の人々を助けてます。自分も同じように心臓止まり掛けましたがこのように。彼女のおかげです。待って下さいね。今後の対応について看護師に連絡を取り……ああ」
 相原は言うと、自分が座っていた椅子を夫人に勧めた。そこへ、連絡を受けたのだろう、先の愉快な看護師が小走りで到着。
「あれ?坂口(さかぐち)さ……」
 夫人が所定の位置にいないためか、見回す。
「こっちです。大丈夫です。落ち着いてらっしゃいます。ベッドの交換を……」
 看護師は夫人が移ったことに気づき、表情を緩める。
「オーケイ。手配する……もう一度洗濯だねそれ」
「ですかね。で、お母様どうしましょう。説明を受けられたいと思うんだけど」
 相原の言葉に、看護師は小気味よいとばかり、口の端に笑み一つ。
「ご案内しますのでこちらへ」
 看護師は夫人を伴って立ち、出入り口で立ち止まると、相原を振り返る。
「彼女は?」
「止めて聞くよなタマでなし」
「そういうことか。鬼だね」
「いや、魔女という方が正確」
 
アルゴ・ムーンライト・プロジェクト第3部・了
(アルゴ・ムーンライト・プロジェクト・終)
 
レムリアのお話一覧

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