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【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-04-

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「(どうせ……)」
 男の子が独りごちる。この手足では、傷癒えて故国に戻っても笑い者になるだけ。働く口はないうえ、
 部族のために戦うことも出来ない。
「(だったらせめて、家族に会いたい)」
 本に書いてある通りの氷を、入手したい。
 揺らめく瞳に見つめられ、彼女は気付かれないようにため息をついた。自分の解釈では、この話は事実と言うよりは教訓、寓意。すなわち、
 〝不可能を可能にするには死ぬほどの決意と努力が必要だ〟
 或いは、70年は単なる寿命であり、努力が実は生き甲斐になっていて、従って、生き甲斐とは努力するものがあるかどうか、と言いたかった。
 もっと単純に、両親は想像していた幻か、死を目前にした故の霊的な交流で、みたいな可能性もある。どっちにせよ“死後”に出会えたことは確かだろう。……もっとも、それでは教訓と言うより皮肉になってしまうが。
「(大昔でも70年で見つけられたんだ。……そういやニッポンの友達って言ったよね。ニッポンの技術ならすぐに見つかるんじゃないのか?なぁ、訊いてみてくれよニッポンの友達に)」
 男の子は話す途中で思いついたのだろう、声のトーンを上げ、ベッドから身を乗り出した。
「(え……)」
 彼女は躊躇した。即答できる言葉を持っていなかった。
 それは全て想像の産物、おとぎ話だよ……言えるか?
 日本の友人に訊く。知らないと言われて終わりだろう。恐らくは。
 だからって、日本の友人など実は嘘で……
 いずれも彼が納得できる答えになるまい。落胆と裏切りの傷しか彼には与えない。
 男の子の表情から、笑みと興奮が熱冷めるように去った。
「(……判ってるんだ。全部ウソなんだろ)」
 対して、ただ黙っていても結果は同じ。
 ならば。
「(待ってよ)」
 
(つづく)

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