【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-07-
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「どうしよう。ごめん、私の勝手な判断で巻き込んじゃって」
泣きそう、というのが率直な気持ち。でも、当座思いつく相談相手はこの彼だけだ。
『……そんな声出すな。状況は理解したから。まぁ、そのままじゃ、どう動いても彼は傷付くなぁ』
「うん」
やっぱり判ってくれる、と思い、思わず頷く。
頷いてから、自分の反応が幼女みたいだと思う。ユーラシアの向こうを頼ってるんだと、否が応でも自覚せざるを得ない。
代案の一つも用意できるのが、あるべき姿なのだろうが。
返事が来るまでのタイムラグが、待ち遠しいような怖いような、悔しいような。
しょうがねぇな、と、電話の向こうで苦笑いするメガネの顔が目に浮かぶ。
そして、タイミング的に恐らくそれで間違いないことも。
結果。
『ロッテルダム出張があんだよ、来週』
それは解決のサジェスチョンだと彼女は知っていた。
ロッテルダム。そこからここまで超特急で40分である。彼はここに来てくれるつもりなのである。
「え?こっち来るんだ?」
言葉尻に笑みが入る。ゲンキンな自分。
『ロケット燃料の学会』
「(ロケット!)」
これも聞こえたらしい。日本のハイテク+ロケット……マヌエル君がすごい想像を抱いたことが容易に知れる。ちなみに、彼女自体は、米露の派手な宇宙開発より、この国が〝ソーラセイル(光圧推進)〟の衛星をヒョイとばかり打ち上げたことの方に心底驚いた。
それがSFに登場する未来技術であると、当の彼から聞いて知っていたから。
でも、
「え?電子回路のエンジニアって……」
彼女は自分が認識していた彼の職との齟齬を口にした。そういう方面の研究職に配属され、OJT(オンジョブトレーニング)しごかれ中とか。
「(ロケット!エンジニア!)」
カクテルパーティ効果に近いのだと思うが、都合の良い部分は案外ハッキリ聞こえるものだ。
(つづく)
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