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【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-12-

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 相原はマヌエル少年の両肩に手をして言った。
 彼女レムリアがフランス語とオランダ語に訳すのを待ち、主治医が発言。
「(ミスターニッポン。それは水とメタンだけなんだよな)」
「おっしゃる通りです」
「(逆に言えば人体への影響はたかが知れてるわけだ。体積が増えるのは塞がれた血管の拡張なんかに使えるかも知れない。可燃性ってのも、焼き切って止血とか、使い道がありそうだ)」
 相原は頷いて。
「祖国のために。君の気持ちは判る。でも僕は君に、地球と人類のためにというスタンスを提案する。君が祖国から誇りと感じる存在になればいい。ちなみにオレが研究しているのは……人類が太陽系から飛び出すためのエンジンだ」
 相原は言い、立ち上がった。
 対し、ようやく、という感じで、遅れて顔を上げ、相原を見るマヌエル少年。
 その傍らでハイドレートの燃えっぷりを自ら試す主治医氏。
 レムリアは彼らに順次目線を向けた。今起きているこの事象は、悩める弟があり、導く兄がおり、その父が見守っている、の有様に思えた。
 その男同士のやりとりこそは。
 薫陶って奴だ、レムリアは気付いた。
 男だからこそ解決する、出来ることもある。以前相原が言ったこと。そして今回、彼は自分の失敗がその領域に入ったと悟って、飛んで来たのだ。
 かっこいい、学、あんたかっこいい。
 医師が手袋を外し、口を開く。
「(学者になれというミスターニッポンの提案に僕も賛成だね。祖国へ還元というなら、成果を持ち帰って生かせばいい。メタンハイドレートはメタンと水だ。祖国の水不足解消に繋がる部分もあるんじゃないか?)」
 主治医は言って、白衣のポケットに両手を突っ込み、相原の隣に立った。
「ページめくり機と燃える氷は持ってけ。君にやる。でも言った通り食うと舌べろが凍り付いて腹の中で膨れるからな」
 相原はケースの蓋を閉め、丁寧に留め金を掛ける。
 
(つづく)

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