【魔法少女レムリア短編集】夜無き国の火を噴く氷-13-
←前へ・次へ→
マヌエル少年は〝父〟と〝兄〟の発言を交互に見つめた。言葉の意味は判らなくても鼓舞しているとは気付いているようで、レムリアが訳す前にその瞳が輝き出す。
それは、その輝きは電球、炎……否否。
星の誕生。
無秩序のように見えたガスやちりが、何かのきっかけで集まり集まり凝縮して渦巻き、融合して熱く明るく輝き出す、その機序は、輝きだしたその姿は、星の誕生そのもの。
「(図書館行くか?付き合うぞマヌエル。コトバのヘタクソは勘弁してくれよ)」
主治医はニヤッと笑って言った。ややたどたどしいフランス語。最も、オランダは相原の乗ってきた超特急がパリ発であるように、ベルギーを介してフランスとつながりがあり、バイリンガル、トライリンガルは珍しくない。
「(この身体でも……祖国に貢献……)」
「(当然だ。君は原始人でも野蛮人でもない。身体的ハンディキャップは機会の不利を意味しない)」
主治医は言った。
「日本に来たらアキハバラ行こうぜ」
相原学はニヤッと笑って、午後のひげ面の顎をポリポリ掻いた。
「(あ、うん!行くよオレ日本に。ありがとうミスターニッポン。先生、図書館連れて行ってくれ)」
「(請け合った。魔女っ子ちゃん、彼を借りるぜ)」
「(判りました。お願いします)」
レムリアに断りを入れ、主治医はハイドレートのジュラルミンケースをマヌエル君の腿に乗せ、車いすを押しながらイベントスペースを後にした。
「(ここに人類の課題が入ってる……誰も解決できてない問題が入ってる……なぁ先生、オレもっと勉強したい。そうだよな、手が無くても足が無くても勉強できる。国で一番になって……)」
「(国?セコいこと言うな。世界一の宇宙物理学者は、病気で手足どころか声も不自由だぞ……)」
〝父と息子〟の会話が次第に遠くなる。
(つづく)
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】聞こえること見えること-01-(2021.01.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -20・終-(2021.01.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
- 【理絵子の夜話】午前二時の訪問者 -19-(2020.12.26)
「小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -04-(2021.01.13)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -03-(2020.12.30)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -02-(2020.12.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -01-(2020.12.02)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生担当係(但し、-魔法使い) -36・終-(2020.07.08)
コメント