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【理絵子の夜話】犬神の郷-42-

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 キュクロプスは生きながら身体を食われた。
 骨すら残らず食われた。犬たちの咀嚼からして柔らかかったようである。頭蓋形成と平行して骨にある種の病気を持っていたのであろう。
 結果、毒々しい赤色の領域が雪の上に染み広がった。
 ストップモーションの掛かった心理が、食われながらどう反応したかは判らぬ。3人とも精神感応を自在にオンオフすることは容易である。知りたくなかったというより、その辺は犬神に任せたという方が正しいかも知れぬ。
 行く手は、大地の割れ目。暗く、狭い。
〈何も地形に合わせて私たちが縮こまることもないでしょ〉
 美砂は言うと、右の手に拳を握り、その甲を割れ目に向け振り上げ、そして振り下ろした。
 直接的には地震であった。
 その振動で割れ目は大きく押し広げられ、想定外の空間を彼女達に開示した。
「これって……」
 超能力全開状態の3人に肉声は要らぬが、思わず声が出た。
 そこは、白日の下に曝された地下集落であった。割れ目の中に住んでいたのだ。
 が、子細を把握する前に、猛悪たる攻撃の念動への対処を余儀なくされた。
 さながら地下の巣を暴かれたスズメバチのごとく、次々宙に浮かび来、ずらりと居並ぶ異形の者たち。
 所謂“五体”を有する造作から人間の範疇に属すると思われる。
 しかし、その外見は、とりわけ頭部の様相は。
「鬼だ」
 登与が呟いた。
 昔話の鬼起源には種々の説がある。流れ着いた異人種、古代人の生き残り。
 そして、
 この場の場合、キュクロプスからの延長と取れば、何らかの骨形成不全による外観上の問題に行き着こう。或いは遺伝的に頭蓋内に腫瘍が出来やすいのかも知れない。それぞれに角に見えたり、凹凸や左右のバランスに対称性が無かったり。
 理絵子が思い出したのは、近親交配を繰り返した挙げ句、顎の形状が特異になった中世王朝ハプスブルク家。
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(つづく)

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