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2012年10月

【理絵子の夜話】犬神の郷-49-

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 先ほど絶命した犬たちが霊的存在としてそこにあった。彼らからのテレパシーによるメッセージであった。
 確信がある。彼らは死して文字通り犬神に昇華した。
〈我らは、この者達を抑えよ、あわよくば殲滅すべしと任ぜられたが、こうして肉の身を出でてその方策を見つけたり。死こそ必要であったが真(まとこ)なり。故に問う、この者達を然るべき地へ、あるべき時空へと誘う。それを我らに任されて良いか〉
 古風な言葉だが、彼らは鬼達を抑制し、更には滅ぼすことを任務として、この地に遣わされたようである。が、今の今まで滅ぼすことは適わず、ようやくそのために“死ぬこと”が必要だったと気付いた。そして、解決法は理絵子の思いつきの通り。
「然り。頼んで構わぬか」
 左後方、控え待つ犬神に向かい、理絵子は振り返って確認した。その髪が翻り光り輝く。
〈御意〉
「屠れ犬神」
 大権を得て、理絵子は再度命じた。
 犬神、それは犬の形をした炎であった。
 鬼の一族は生じる事態を悟ったようであるが、その時既に動くことは出来ないのであった。
 炎の犬は屠った。一族の悉くに噛みつき、悉くが炎に包まれた。
 それは、彼ら鬼族もまた、死ぬ必要があったのだと彼女達は解した。
 死んだと認識する必要があったのだ。
 死ぬことにより肉体属性に対する欲望や憧れは全て無くなる。還元に身を預ける事への安らぎを見出す。
 炎の犬が駆け回り、鬼達の発散していたエネルギ、形成していた力の場が揺らいだ。
〈大地が弾けるぞ〉
 警告であった。
 大きな地震が生じる。
 美砂が呼応した。彼女達は宙へと逃れ、程なく、マグニチュード7を越す直下型地震が一帯を襲った。
 大地が寒いかのように震え、轟く。そして、積もった雪はもちろん、雪からの水分であろう、滑りやすくなっていた山肌すらも剥がれて崩れ落ちた。“垢すり”の垢のように、斜面の森ごと地滑り崩壊。似たようなことが濃尾地震で起きたと理絵子は読んだことがある。
 雪煙と土煙。視界奪われる前に高度を取る。
 集落に四方の山から雪崩が襲う様が見える。
 集落!
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(つづく)

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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-13-

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「何でキャンプにもっと早く……」
「神が家族をお試しになっているんだと思って」
 死ななければ神の庇護下。
 敬虔なのは不信心より結構なのだろうが、非論理的なのは弊害と言うしかない。
 反射的に怒鳴りつけたくなる。しかし、音や光の刺激が破傷風には良くないことに気が付いて、
 代替として取った行動は。
 平手打ち。
 しかも頬骨のあたり。鈍い音がしたので〝ほっぺにビンタ〟よりも痛かったと思われる。
 実際彼は濡れた通路に尻餅をつくことになった。存外に力が出て張り倒してしまったのか、柔弱なはずの女の子にひっぱたかれて腰を抜かしたのかは判らぬ。
 あまりの出来事に、きょとんと固まってしまった彼に対して。
 父親の方が動いた。腰のナイフを抜いて構え、低い声で脅迫調。だが次の行動に移ろうとはしない。どうやら警告と言うことらしい。次は躊躇しないぞ。
 その、構えたナイフ。
 血痕がある。彼女は見て取った。
 それが、疑問の答えと認識した。
「殴ったのは申し訳ない。でも君が命を粗末にし過ぎるからだ。神様が試したんじゃない、不潔にしている人間が原因だ。病気を広めたのはこのナイフ」
 説明すると瞠目した。
 父親への通訳を頼んで以下の確認。
「そのナイフで、この子の臍の緒を切りましたか?」
 答え、イエス。同じ症状の弟妹も然り。
「そのナイフは他にどんなことに使っていますか」
 万能ナイフだという。ここは良くネズミが出るから投げて刺し殺す。
 果たして、父親が指さした足下、汚泥の中にネズミの死体。
 間違いなかった。ことごとく不潔なナイフを使うから、ことごとく感染するのだ。破傷風菌はこの刃に常在しているのだろう。
 ちなみに不衛生な新生児対処で破傷風というパターンは途上国での典型例と言える。へその緒を切るというのが宗教的儀式化しているゆえに、最も不潔に弱い状態で不潔が繰り返される。

(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-48-

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 ならば、ここで守るべきは、彼らの虐殺・絶滅では無く、生きる権利であろう。
 すなわち、人肉捕食の存在する世界へ送る。ちなみに、彼らの外見や嗜好の変質はどうやら当時棲息した大型霊長類と交雑した結果らしい。正常な性的欲望を断念した挙げ句の倒錯は現在でも散見されるが、人間に拒否された結果の同類行動と見て良かろう。類人猿は眼窩の上部が突き出しており、同様の特徴が彼らにおいては“角”という形に現出したのだ。ただ、交雑種は多く子孫が続かない。その結果が悲しき魂の添い集うこの場所。
 そう、今ここに純粋な肉体を持った者はいない。さすれば、過去、幾人の女性達がここで淫魔の如き霊に囲まれ非業に息絶えたことか。……彼女達の声も、痕跡も、感じないが。一体何者がその非業を昇華して天へ送ったのか。
「美砂さん、タイプリープの能力をお持ちですか」
 理絵子は思わず敬語で美砂に尋ねた。人に頼み事をする時は極力丁寧に、という意識があるのでおのずとこうなる。
「それってつまり人間タイムマシンでしょ。さすがに持ち合わせてないよ。テレポートとか跳躍系は特殊というかそればっか専門という感じがする。……この人たちをどこかの時制に送り込むの?」
 美砂は訊き返した。時間を跳躍する能力があるか……真顔で尋ねようものなら正気を疑われるのが普通だが、必要性に基づく問い合わせであり、唐突さはさほどでもあるまい。
「ええ。北欧の神話に曰く、死して横たわる兵(つわもの)の屍数多(あまた)、狼が群れて喰らうは神の御許へ戻るが如し」
 先にも書いた髪の毛の主から聞いた話である。戦乱で累々と横たわる兵士達の死体を狼がむさぼるが、それを主神オーディンの元へ戻る儀式と解釈する。
 すると。
〈理絵子殿、我々が仰せつかろう〉
 犬神、という概念を伴い、意志の声はあった。
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(つづく)

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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-12-

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「オレの見てないところで勝手な行動をするな」
「ごめんなさい。空気感染って……」
「小難しい言葉で誤魔化すんじゃねぇ」
 彼女の答えを少年は遮った。彼女は言葉を切ったが、しかし、言うべき事は言わねばならぬ。
「あなたも出来るなら近づかない方が……いつも様子を見に?」
「妹だ」
 止めるわけには行かないか。
 自分達の会話に気付いたか、祈りの声が一旦止まった。鉄の廃材に粗末な布をかぶせた幕屋があり、彼がその布をめくる。
 寝台の幼子と、
 祈祷の装束であろうか、貫頭衣を着、帽子をかぶった父親が彼女を見る。次いで面食らって眉をひそめる。
 彼が割って入り、親子の会話。父親は頷くと彼女に目を向け、恐らくは症状の説明を身振り手振りで懇々と始める。
 対し、彼女は頷いて応じつつも、一見して幼子の症状を理解した。逆エビ形に反り返った身体、食いしばられた口蓋、顔面に浮き出た筋肉と腱の造作。
 それこそ。
「破傷風(Tetanus)。表の医師にさっきの注射(破傷風免疫グロブリン)を。1本残っていたはず……」
 本当は菌の有無が確定しないと判断を下せないが、特徴的な様態はまず間違いない。
「なに?どんな病気だそれ」
 説明しているヒマはないのだが。
「細菌感染症の一種。神経に重いダメージを与え、筋肉を無茶苦茶に動かし、身体を弱らせる。この〝流行り病〟は、他の子も同じような状態?同じ状況で暴れて骨を折ったり、舌を噛んで亡くなったりした子がいる?」
 該当三人。そんな症状、皆、既に死んだ。
 ちなみに破傷風菌は空中を飛ばない。つまりインフルエンザのような空気感染はしない。不衛生な土中に棲息しており、主として傷口から侵入する。
 そして、ここは不衛生。
 なので、感染というよりは、不衛生を基点とする何か共通項がある。と思って訊いたら、犠牲は全部彼の弟や妹だったという。
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(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-47-

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 やがて王権側の同様な能力者によって封じ込まれる。前出の伝説中の出来事である。
 裏返せば、以来1000年余をこの地に封じられたまま。
 その間、蔑まれ、彷徨った者達をここに集めたようである。地下茎状のつながりは文字通り人間同士の交わりの霊的表現。リアル恋人同士の究極の愛の姿が性行為なら、彼らの代替がこれ。
「霊が本質で肉体が仮の姿。どんなオカルトの本にも書いてあるけどさ」
 理絵子は独りごちるように言った。
「肉体の恋は肉体でしか出来ないんだよね。肉体が蔑ろにされることを意味しない。そこが地上における私たちの居場所なんだ」
 理絵子は158センチ43キロの自らを愛おしく感じた。男子達は学年よらず文句なく学校一の美少女だと囃す。神々しくて神秘的で近づけないとも評す。好きになっても声かけることすら許されないんじゃないかと。同様に綺麗な娘と誉れ高い登与とイザコザを演じ、そして今、共に過ごす間柄になったことは少なからず話題になった。仲良くなるべくしてなったのだという声も聞く。
 が、そんな肉体的属性に関して、自分自身で関心を持ったことは無かった。成長に関する悩みを抱いたことはないが、大事にしようという気持ちも無かった。
 だが、今は違う。
 登与が言う。
「天国へ行きましょう。霊に気付きましょう。宗教団体の勧誘常套句。でも違うんだよね。肉体は試練でも何でも無い。億年単位引き継がれてきた地球生命の証。地球にいる以上、これを守り次代へ受け継ぐことこそ地球生命としての第一の義務」
 ここに、地球の生命を担う存在としての自分がいる。それも女性として。
 ひょっとして霊という存在を知ることは、逆に肉体の持つ奇蹟性に気付くことではあるまいか。
 巫女が、霊界との通信の担い手が女なのは、他でもない生命に通じているからではあるまいか。
 古代、女性は太陽であった……平塚らいてう。
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(つづく)

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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-11-

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 想定外の予防注射で破傷風は残り一本。ただまぁ、みんなオーケイだから良かろう。
 そろそろ本題に入りたい。
「それで?流行り病と聞きましたが?」
 ウソ付いて自分たちを呼びつけ、例えば人間ドックのような検査を首領や支配者に施せ、という集団もある。その類例を疑ったが、病気の子がいるのは本当で、その伝染の可能性から隔離しているという。ちなみに、この子達を先に診断させたのは、その子の病気が医師や看護婦を経由し、元気な子へ伝染したら困るから、だそうだ。
「お前たちが死んでもどうでもいいが、戦士となるべき授かり物のこいつらが死ぬのは困る。案内するからついて来い。女、お前だけだ」
 彼女が準備する間、医師は銃口を向けられホールドアップ。彼女は応急処置に必要な用具一式だけリュックに背負い、その医師を机に残して立った。なお、超音波は重いので必要があれば追って持ち込むことにし、後回し。
 少年はその間に洞窟まで往復した。戻った手には火のついた松明。
「来い」
 炎を掲げ、洞窟都市の奥深くへ案内される。足もとの汚水と、時折感じる天井からの雫が気になる。なお、汚水の捨て場を外部に設けないのは、発酵して熱を持つと無人探査機に察知されるから。及び、侵入者があった場合に内部の堰を切り、侵入者めがけて〝鉄砲水〟とするため。
 排泄物を武器にするのはローマ軍などに見られると彼女はどこかで読んだ気がした。
 と、思考を遮るうめき声。そして、リズムと音階を持った祈りの声。
 うめき声は子ども、しかも乳児であり、祈っているのは父親。と判じる。
 赤ちゃんが〝泣く〟のではなく、うめくというのは尋常ではない。
 ひどい臭い。
 近づく前に様子を見たい。思わず立ち止まると、少年が引き金に手をして俊敏に振り返った
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(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-46-

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 端的にはビニール人形に人の皮膚を貼ったようなものと言うか。
 都度地下集落内の乾燥皮膚を念動で寄せ集め、霊の身にまとって“肉体”を偽装していたのだ。言ってみれば本物の人間のパーツを使った人形・ゾンビである。
 それが、今、登与の放った炎によって片っ端から燃えて失われて行く。
「そんなことをしたって、眠りに落ちる心地よさや、満腹の悦楽、性の歓びは得られないよ」
 美砂が、言った。
 看破であった。
 同情、が、彼女達の心理にあった。
 鬼達はそのことに気付き、動揺し、そして敵対心を喪失した。
 動揺……彼らは過去、恐怖と攻撃、それ以外の感想を持たれたことが無かった。同情されることに戸惑いを見ていた。
 攻撃されない、彼女達は確信して地上へ降りた。
 “一族”は言わば多重人格のような様相を呈してそこにあった。
 根本・基本となる人格があり、地下茎のように分身的人格と繋がっている。分身的人格は明確な人格を成しているものもあれば、発展途上で各個独立していないものもある。この発展途上が乾燥皮膚を纏うと子どもに見える。
 オカルトに言う浮遊霊、動物霊と言われるものの多くは、強い気持ちの断片である。怨念だけ、悲しみだけ、等、強い気持ちの塊がいつしか人格的特徴を備えたものだ。動物と言われるのはそれ未満の存在である。似たような形で、ここでは各個が繋がっている。
 忌み嫌われた人格の集まるところ。
 そうした人格が寄り添い、怒りのままに人を殺し、喰らい、暴虐と陵辱を。否、のみならず。
〈恋が、したかった〉
 根幹となる人格が言った。“父鬼”と呼ばれているらしい。
 元は異形の外見を生まれ持った、いや、肉体的異変に伴い超能力を備えたミュータント。オカルト的な書き方をすればそうなる。が、古代日本においてはただの化け物。
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(つづく)

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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-10-

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 不服抑えて命令を承知すると、年季の入った木製の椅子と机が出てきて座らされ、洞窟都市に声が飛び、子ども達が走り出てきた。
 彼らの服装はハッキリ言ってボロ布をまとったような。
 乾燥地だから目立たないだけで、衛生状態は良くない。生活排水であろうか、土中都市からチョロチョロ出てくる水は汚泥混じりに思われ、実際、少々臭う。
 ただ、幼子たちは元気であり、その目の輝きは天真爛漫。にっこり笑って銃撃つ真似事「異教徒をぶっ殺すんだ」ダダダダダ……多分。
 ともあれ、彼女がしゃがんで腕を広げたら、あっという間に囲まれた。
 みんな同じ言葉を口にしながら、青いカーディガン引っ張ったり頬ずりしたり。その言葉は殺す、とも、異教徒、とも、異なる発音。
「天使の服、なんだよ」
 そもそも青い服は珍しいらしい。あっても目立つから着ない上、この地の服地は基本、麻。仮に染めるにしても、古来〝青い染料〟を天然の産物から調達するのは至難の業。宝石であるラピスラズリを砕く程度しか手は無く、結果、神権の象徴や、王家貴族のステータスシンボル。
 数多キラキラの瞳に囲まれ、彼らをカモの子のように引き連れ、診察の準備。机は本来この子達のための私設学校で使う教卓だという。そこに測定器をドッカと載せ、バッテリで起動すると、子ども達がワッと集まって電子画面のスタートアップを覗き込む。その手に手におやつを配り、男達にも手渡す。
 せんべい。
「なんだこりゃ。米帝のウンコか?」
 日本のお菓子で原料がコメだと説明したらやはり顔色が変わった。
 子ども達を並ばせ、順次診る。そもそも走ってきた位なので、やや身体は小さい気はするが、少なくとも病気ではない。むしろ伝令の彼同様、体脂肪率の低い引き締まった体つきだ。流行り病と聞いて想定したのはコレラや赤痢だが、この様子ならそれは無いと断言できる。ただ、みんな小さな擦り傷をあちこち作り、前述の衛生状態であるため、破傷風の予防注射。痛そうだが泣き顔を見せないのは〝神に庇護された子〟の自負だろうか。
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(つづく)

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【理絵子の夜話】犬神の郷-45-

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 彼女達は聞いていた。守るんだという彼らの決意を。
 最後の瞬間まで貫き通した意志を。
 知ったその時、意識で何かが、外れた。
 悲しいが、それ以上の強い感情。
 ……何しやがる。
「邪悪な者よ」
 こと女性の方が強いかも知れぬ。怒りは肉体のタガを外す。
 タガの外れた肉体でなされるものの一つが他ならぬ出産である。その際の情動は怒りに近い物と言われ“怒責効果”と称される。怒りと、痛みに対する対抗という、肉体に最も大きな力を発揮させる二つの状態の相乗効果を持って(両者を必要として初めて)出産が成し遂げられるのだ。
 肉体は肉体の本能によって、心と異なる反応を示す。
 恐怖乗り越えた理絵子の動作は俊敏そのものであった。相手も今は肉体の属性を備えている。そこで錫杖を振るい、のしかかって来るその者の目を突く。
 結果、肉体は再び霊体に回帰したが、とりあえすどうでも良い。
 美砂と登与に襲いかかっていた者どもは自ら離れた。類似の攻撃を受けると悟ったためであろうか。
「どうしよう」
 シールドバリアを固定の上で美砂が尋ねた。
 要求されたいわゆる生け贄は、性的なもののみならず、食料という側面も多分にあったに相違ない。出産可能年齢を過ぎれば“用済み”だからだ。すなわち、相手も人間型生命体だが、自分達と存在パターンとして相容れない。
 結論は一つであった。
 絶滅、だ。
 だが、それは立派な殺人。虐殺。ジェノサイド。
「忘れてませんか?肉体傷付けても死なないよこいつらは」
 美砂の指摘に、動いたのは高千穂登与であった。
 “アポロンの火の玉”を彼女は地下集落に投じた。
 何か呪文があったわけではなく、手の上の球体を投げ込んだような動作をしただけであったが。
 地下集落は猛火炎に包まれた。
 ある種のパイロキネシスであろう。
 いや。
「登与ちゃ……」
 理絵子は呼ぼうとし、気が付いた。
 彼らの“肉体”の正体。
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(つづく)

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