【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-17-
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消毒をしてガーゼとテープ。
「やるべきことはやりました」
彼女は言った。男達の表情が僅かに緩んで安堵の兆し。
そこで気付く。この子の母なる人は?
尋ねた回答、閉じ込めてある。
その理由、この病気が母親のせいなら閉じ込めることで感染は収まるだろう。
何故にそこで母を疑う。
「でも、違うんだよな」
彼は言った。ナイフ経由というメカニズムは医師からの補足もあり理解したという。
「当たり前です。閉じ込めるとか何てひどいことを。あなた方は女を何だと思ってるの。ただ、お母様には、お母様自身にうつってしまうから、処置は終わったけど少し待ってと伝えて」
もちろん、実際にはそれのみならず、パニックで大声など刺激のある行動を取られると困るから。という側面もある。
少年が伝令に出たのを見送り、彼女は幼子の傍らに腰を下ろす。
「……」
父親が異国の語で何か尋ねた。この後どうするのかという意味のようだ。
あの攻撃性や粗暴さはすっかり影を潜めている。自分が形而上的な何者かとつながりがあるのでは、という認識。
「見守ります。見守るしかありません」
彼女は言い、幼子の汗をガーゼに吸い取らせた。言葉は通じなくても気持ちは理解してもらえる、そんな気がする。
実際、どんな名医でもできるのはここまで。現在までの所、人類は神経細胞に結合した破傷風菌毒素を再分離、攻略するまでには至っていない。そして、上記の激しい身体の様態は、毒素が神経細胞を冒していることを示す。
だから、前記筋肉の硬直は発作的に生じるが、いつ起きるか判らない。昼夜の別はない。
24時間体制で体内の戦いに付き添い、危機が生じたら即座に手を差し伸べる要がある。もちろん、一般の病院であれば集中治療室で対処する。
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(つづく)
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