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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-18-

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 少年が戻ってきた。父子の会話があり、父の言うには、
「あんたがさっき何を言ったか判らない、と」
「見守るしかありません、と言いました」
「いつまで?」
「症状が緩むまで。何日か、1週間か……」
「どうやって」
「私がずっと」
「一人で?」
「もちろん、医師も承知しているはずです。入室を許されたのは私だけなのでしょう?」
 彼女は言った。医師にその旨告げたら交代を言い出すであろうが、部族と自分が拒否することもまた知っているであろう。
 むしろ、この父親が自分に対する認識を変えた以上、自分が継続的に状況を見る方が合理的だ。
 父親が何か言った。
「天使だ、って」
「お父様は食事をお取り下さい。東京に兄貴分の男がいますが、彼が教えてくれました。『腹が減っては戦が出来ぬ』」
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 破傷風のこの状態は第三期と呼ばれる。
 コミュニケーションが困難であるため失神状態と捉えられがちだが、実際には意識は清明で、間断ない激痛の故に眠ることはもちろん、失神すらも不可能な状態が続くという。痛みが続く他の病気、様態にあっては、さすったりするだけでもかなり和らぐものだが、これの場合、さする行為が刺激になるため、見守ることしか出来ない。ちなみに彼女は注射等実施したわけだが、大過なく出来たことは奇蹟に近いかも知れぬ。最も、彼女はその辺可否可能性を見抜く能力を持ってはいる。機序を説明できない能力であるが。
 その能力が言うには極めて刺激に敏感な状態に入ったという。それこそ触るなという警告なのだが、彼女はそれに耐えられず(我慢できず)、試みに幼子の手に準静的とも呼べる動きでそっと触れた。すると、刺激的反応を生じさせないことには成功したが、大人ですらかくやという筋力で指を握られて抜けなくなった。
 6時間が経過した。
「食べてないじゃないか」
 深夜になり、少年が姿を見せ、彼女が食事に手を付けていないことを知り、不満をもらした。
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(つづく)

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