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【魔法少女レムリア短編集】リトル・アサシン-20-

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 彼女はそこで説明を切り、幼子の上に覆い被さる。
 発作である。
 幼子の身体は彼の声により発作を生じ、強く反り返り、跳ねる。彼女はその余りの激しさに脊椎を折ってしまう危険を感じた。
 幼子が確実に落ち着く方法。
 ひとつ、知っている。ただ、でも。
 他に手はない。彼女は意を決すると、カーディガンとTシャツをまくり上げ、幼子に覆い被さり、胸に抱いて自分の肌に触れさせた。
 胎内の赤ちゃんは、羊水に浮かびながら母親の血流と鼓動の音を聞いているとされる。
 それは、貝がらを耳に当てて聞くあの低いノイズとほぼ同じである。それに鼓動の音が加わったもの。
 だから、誕生後も暫くはそれに類似の音を聞かせれば落ち着くとされる。母の温度を感じ、母の音を聞く。
 幼子の横顔に胸元をあてがう。
 感じる体温は発熱のためか炎のよう。
 変化が、あった。
 幼子の身体から強張りが抜けた。
 それは、これで行ける。これで乗り切れると彼女が確信した瞬間でもあった。
 幼子の顔をシャツの胸元から覗き込む。切りそろえた短い髪の毛さらりと降りて、うつむいた14歳の横顔を彩り、彼女は安堵して小さく微笑む。
 見ていた彼は言葉を発さず、そして目を離さない。
 どれくらい時間が経ったか。
 小さな声がして彼女は気が付いた。
 そのまま、眠り込んでしまっていたようだ。慌てて見下ろすと幼子は穏やかである。腕と胸元に感じる体温は適度に低下し、その筋肉は幼子本来の柔軟さに満ちている。
 そして。
 彼女はこの時、自分が女であること、そして豊かな胸を欲していることを強く激しく意識した。
 幼子の手が自分の胸元を触る。
 乳房を探していることは明らかだった。
 第三期。それは岐路ではあるが終着を意味しない。特徴付ける筋肉の反応が収まれば、症状は寛解に向かう。
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(つづく)

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