【魔法少女レムリアシリーズ】ミラクル・プリンセス-084-
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「やった!」
子ども達から歓声が上がり、祈りが喜びに変わる。レムリアは子ども達の中に飛び込んで行き、片っ端から抱きしめた。
「ありがとう、ありがとう、みんなのおかげだよ!」
シスターは天へ向かい十字を切る。
廊下を走ってくる足音。
院長がドアの向こうに現れる。半ば呆然とした面持ちで立ちつくし、荒い息をしながら歓喜の輪を眺める。
「何をしている?これは?」
「蘇生しました。ドクターのご意見は伺っておりましたが……。あ、自発呼吸もありますのでAED外しますよ」
「ちょっと待て」
高木看護師のセリフに、院長は不承不承、という表情で、まず聴診器をあてがった。
次いでAEDを心電図測定モードとし、しばらく波形を眺める。
「……これで来たらと思ったが……うーむ。戻ったか」
言葉尻を単純に解釈すると極めて残酷に聞こえるセリフをひとりごとのように言い、AEDのスイッチを切る。
そこまで行い、非常リュックと、新品パッケージを開けたが故の袋や箱等を見、果たして院長は不機嫌になった。
「このAEDは非常用の……」
「非常事態でしたから使いましたが何か。普通に徐細動器があれば使わずに済んだんですけどね。彼女の状態ならベッドに常備していてしかるべき。それとも何ですか?もはや必要なかったとかお考えで?」
レムリアは言った。
口調に不機嫌な調子をはらんだのは否めないだろう。まいかちゃんに対する病院の見識は、状況を見る限り、心停止の発生を前提としていたが、対処を織り込んだものではない。
レムリアに怒りが芽生えたと知った子ども達から、一斉に笑いの花がしぼんだ。
まるで一心同体である。それはすなわち、レムリアと子ども達との間に、信濃町とほぼ同等の“絆”ができあがった事を意味する。
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(つづく)
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